書簡・編

おたくもすなる日記といふものを、我もしてみむとて、するなり。

058: 2023年1月16日_声、慣声の法則横浜公演

拝啓

 初春らしいのどかな天気が続いております。横浜アリーナ公演のお疲れも癒えて、定例の、あるいは新しいお仕事に、そして次の公演に向けてご精励のことと拝察いたします。
私といえば、例年のSixTONES初日の心ここにあらず状態からくる転倒、転落、乗り換え間違い等々に見舞われることもなく(いい加減、落ち着けって(笑))今年は平穏に横浜公演に参加できました。「この日のために」年年歳歳、日々トレーニングに励み、1月3日朝7時に受け取った「声」を聴きこみ迎える待望のライブ。午前の仕事を終えて*1横浜に向かい、ライブで暴れて遅くに帰ると客とはいえまあまあ疲れていますから、ましてやステージ上で贅沢な6人出ずっぱりの2時間弱×4日間をこなす皆さんをや*2。ミュージックソンからNHK紅白*3と超多忙な年末から、1日半お休みがあったとはいえバックグラウンドではライブのことを考え続けておられたと思いますし。そんな体力的に厳しそうな中、以前からそうでしたが、特にこのライブ、ステージ上の皆さんの心から楽しそうな笑みが随所に溢れていて、なんと幸せな空間にご一緒させて頂いていることかと感じる瞬間が幾度もありました。「仲良し」を売り物にする*4ことはあまり美しいと思わないのですが「だって仲良いし、楽しいんだから、仕方ないべ」といわんばかりのアイコンタクトや、ついこぼれる笑みなど良好な人間関係の自然な表出は大歓迎です。っても、あなた達、エグい曲でも目配せし笑いあいしすぎでしょう。どれだけ楽しいのだか(笑) はい、新春早々から、皆さんの音楽とライブへの愛と献身、確かに拝受。ありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

愛といえば、今回は過去演目の中でも私が愛を語ってきた諸々の要素、例えば「NAVIGATOR」、ソファ、アニメーションダンス、吊り下げマイク、降る羽根...etc.がさらに洗練されて散りばめられていて、ひょっとして私へのプレゼントかと思った程(もちろん「みんな大好き」要素ですけれど)

Overture -VOICE-

初めてオープニング曲を当てました! 「SHOW & SHOW」「Jungle」「Hysteria」「Amazing!!!!!!」「Rollin'」「Mad Love」「Lost City」...これまでのオープニングも大好きですが、冒頭20秒のアカペラ、まさしく「声」でライブの幕を開ける言行一致の至高至純!

惑わすように照明がセンター、メイン両ステージを交互に照らし、周囲の人々と前後きょろきょろ登場を待つ間、予想外の上空からの降臨に歓喜したCHANGE THE ERAや、檻と初出し「Jungle」に心射抜かれたJr.祭り単独公演を思い出しました。フェSの全貌が見えた時に「何だ、このディズニーランド感」と思ったことは否定しませんが(笑)、MCで夢の国から購入した?と示されたので、やはりそこかと。1回しか使われなくて勿体なかったから「Risky」の椅子をコロニアル風にして、植民地の祈祷師か何か風か、インディ・ジョーンズばりにフェSの口からジャングルクルーズで出てきたら、等と思ったりして(笑)

以前も書いたかと思いますが、アルバムの世界観へ誘ってくれるフィジカル円盤ならではのOvertureが好きです。様々なアーティストの印象的なoverture数あれど、初っ端からこれ程ごりっごりにイズム語ったものがあったろうか。”I can be myself”と”When we sing, when we're here”で一人称の異なるのが、まさに読んで字の如しなのでしょうけれど、興味深い。そして、”my my my”の節回しが好きです。

Waves Crash

来ると思ったのですよ、ふふふ。winter liSTening PARTYのセットリストに入っていた時点で予感。序盤ではなく後半だと思っていたので、配置は想定外。ライブ映えする曲ですよね!

「声」はCHEER誌で語っていらしたように「ライブで演じるなら」を前提に構成されたアルバムとのことですが、「慣声の法則」では新旧取り混ぜた楽曲を入れるフレキシブルさ。でも、まさかの選曲。今でも一番好きなシングル曲を問われれば「NAVIGATOR」と答えるし、カップリング含め3種とも超名盤だと思うし、MVも大好きだし、BGMとして流れれば本当にいい曲だと聞き惚れるし、ノリノリで踊れるし。しかしここで出てくるとは私忖度疑惑案件(笑) そういえば「声」が消えたコロナ禍最初のリリース曲ですものね。初めてSixTONESライブに入る方用の名刺なのかしらと思いつつ。

ひょっとして、逆にドーム公演、Jr.曲から始まったりして。

シアター

ライブで使うなら中盤でドラマチックに使うと思っていた曲。冒頭から代表的シングル曲(「NAVIGATOR」)を比較的マイナーなカップリング曲(「Waves Crash」と「シアター」)で挟んでくる、この抜擢、ありです。タイアップなどの制約もある表題曲より、アーティストさんの本音が窺えたり、本当に好きなのはこちらなのではないかとさえ思うこともあるカップリング曲が好きなので、一曲たりとも疎かにせずライブで使って下さるSixTONESの楽曲への愛は信頼感絶大。「Waves Crash」といい「シアター」といい、佳曲ですものね。

Boom-Pow-Wow

SixTONES担の宝物、「俺らのアンセム」を、惜しげもなくこんな時間帯に使ってしまうとは贅沢な。私調べではライブ後数日脳内ぶむぱぅわぅ状態の人率高し。そんな強烈な中毒性のあるオラオライケイケの中、6人の美しい声の重なりが顔を出すのがSixTONESらしくて素敵。そして、”目を閉じても聞こえるSexy (Voice)”の極超低音が大好き。どんな声もよいと思いながら北斗さんの低音が改めてフィーチャーされたこのアルバムは嬉しい。

ありがたくも12月のザ少年倶楽部観覧に当たった*5ので3階席の後ろ端から「Boom-Pow-Wow」初披露を拝見できたのですが、あの日の北斗さんの衣装、私大好きです。今回のライブでのパフォーマンスと放送回を比べると、振りも収録時からさらに振り切った感じにupgradeされたのですね。

Risky

懐かしのEX Theatre公演。マンションに積まれたソファに座して高所から威圧感たっぷりにせりだして登場した、今でもmy best openingの1つだと思っているそれを彷彿させる演出。厭世感に満ちた表情で肘掛けの髑髏を撫で回したり、winter liSTening PARTYでは隠されていてアルバムで初めて表れた”そう身を任せ~”以降の、なんともいえぬ厨二病感(失礼)の久々さよ(笑) これも、これぞSixTONES

Dance All Night

THE D-MOTION」「Battery」でのSixTONESのアニメーションダンス(でよいのかしら)の類を見ないかっこよさを、最近ファンになった方達にも観ていただける嬉しさよ。SixTONESさんには優しく繊細な面も、ギラギラおらついた面もありますが、私が思う最大の特徴はドライ(じめじめしていないという意味)で洗練されているところ。モノクロを纏っていても鮮やかな彩りが見え、逆に派手の極み的衣装でもすっきり上品に見える。この特徴が体現されたのが動きが制限されたロボットダンスやアニメーションダンスにおける圧倒的な華やかさだと思うのです。

余談ですが、今回はパンフレットも黒基調で装飾最小限ですが、その華麗さ。テキストも盛りだくさんで嬉しかったです。面積広くてロゴが小さい黒Tシャツも渋くて素敵です。私は歴代ステッカーやワッペンじゃらじゃら付けて楽しんでいます。あのサイズ感、ツアー後はジムのダンスクラスで愛用できるので嬉しいです!だから便箋も黒。

OPA!

かたや純で真、かたやよい意味での邪さ*6を含んだ、双極のイケイケのお2人の組み合わせ。強いて類似点を探せばダンスの抜き加減なのかしら(他の4人は、抜かない(笑))。アクセントで首を動かすところが好きです。パフォーマンスもさることながら、2人だけの花道に特効の火花が景気よく上がって、ああご予算豊富って素敵、って思いました。

ふたり

ここまでのハイカロリーっぷりに、少しテンションを落とす、参加する身に優しい癒しの時間。静かで優しくて穏やかで、明るさも少し哀調を纏う、これもSixTONES

オンガク -声 ver.-

元々大好きな曲をセンターステージでわちゃわちゃ*7、観ているこちらが羨ましく思う位、この人達を応援してきてよかったとしみじみする位、多幸感たっぷりのパフォーマンス。ああ、この時間よ永遠に、と思いました。ありがとう。

ミュージックソンの最後に流れた「声 ver.」を有楽町のニッポン放送で募金した帰りの地下鉄で聴いた時は、思いがけない新パートに泣けました(下車していてよかった(笑))。”六線のスコア”の声の重なりの美しき事。この曲に限らず「声」では皆さんの歌声に進境を実感しましたが、中でも最も表現の進化を感じたのは髙地君でした。え、そこ?と思われるかもしれませんが、”オタマジャクシ”の節回しが大好き。

人人人

そんな多幸感をふりまくアイドルの、健気とも不憫ともとれる内心の吐露。だから、恒例の”謎の1曲”だったのか。歌詞の内容をおくびにも出さないクールな楽曲とパフォーマンス、無邪気なマイク遊び。だから私も敢えて歌詞は知らんぷりで楽しく踊りましたとも(笑)
CHANGE THE ERAの「YOU」で円形に配置された椅子+上から下がるマイクスタンドを絶賛しつつも、角度で見えないメンバーもいることが唯一の難と思っていたので、そこを改善してご提供頂いたものかなと(笑) 

そういえば当時、感想に「各々が持つ”Six-TONE”に樹君と高地君はラップとヴォイパが加わって凄い」と書いていましたが、今やこの曲で「全員ラップまで上手」と知らしめてしまいましたね。(あ、上手になるまで努力されたのですよね)。SixTONESの旋律の美しさは言うまでもなく、この楽曲では少しずつ異なる各人の、弾ねるように刻むリズムの歯切れ良い心地よさが堪能できて嬉しい。そして、PLAYLISTでの超絶クールなスタジオギグ!「NAVIGATOR Crossover rearrange」が、BPMやコードの方向性を変えないアレンジで演奏者の即興がなかったので、いつかインプロヴィゼーションかますSixTONESを聴いてみたいと願ってきたのが叶って誠に嬉しかった。あれを見せられ聴かせられて、小さい箱でのライブを夢想してしまったところにドーム公演の告知とかサディスティックな(笑)。ま、SixTONESは箱のサイズでは語れない。

僕が僕じゃないみたいだ~”Laugh” In the LIFE~PARTY PEOPLE

この使われ方は意外でした。「PARTY PEOPLE」は冬ツアーで揃って踊る感じではなかったのかもしれませんが、まだ記憶に新しい昨夏のキラーチューンをお手振り曲にしてしまって勿体ない、と思う反面、センターに入らせて頂いた幸運な身には、スタンド上段の方々が嬉しそうな姿を眺めながら勝手に下の方で盛り上がるには「”Laugh” In the LIFE」と「PARTY PEOPLE」は無条件に諸手挙げて賛成の選曲。はい、「下の方、さぼって」なかったですよ~。あ、1回は立ち見でしたが、スタンドもバックステージも見えないながら、さぼってなかったでーす。結構快適な立ち見でした。まだいける、自分(笑)

Chillin’ with you 

winter liSTening PARTY 時点では何となく印象の薄かったこの曲。アルバムで聴ける日を待たずにPLAYLIST Day.7をもって大好きに転じました。SixTONESの強みはパフォーマンスで楽曲に幾倍もの魅力を補完できることですよね。私的”Just (the) Two of Us”界でGrover Washington Jr.を超えた*8勿論曲も歌も素敵で、堪えられないのが、樹君の”届かない 届かない”の音色、”Haters hate, just leave 'em right there”の発音、”Come on”の北斗さんの中低音の響き*9

センターステージでの立位の歌唱で、皆さん動きが少ない中で北斗さん1人が踊っていて、私もゆるゆると動きながら聴いていたので北斗さんと一緒に踊ってる気分で嬉しかったりして(笑)。唯一の問題はこの曲のグルーヴ感。高揚してしまいあまりChillじゃないんじゃないかしら、とひとしきり自問。

愛という名のベール

メインステージのリフターの高所でドラマチックに歌い上げる様子が、かつての歌謡曲全盛時代の歌番組のよう。気持ちよさそうですね。さらにセンターステ―ジの2人に景気よく降りしきる羽根、羽根。「OPA!」同様、潤沢なご予算に感謝。羽根はJr.時代のSixTONESのライブで非常に印象的だった演出で、これも私に忖度くださったかと誤解しそう(笑) 

STAMP IT

この重量感あるダンス!SixTONESってダンスの重心は低い印象なのですが(どこまで低くなれるか選手権、ありがとうございます)意外に見た目の重量感はない(素人目ではありますが)。このドスの利いた気合いのダンス好きだなと思っていたら、実際ダンスに重きを置いた曲だったのですね。

歌詞にメンバーの意見が多く取り入れられていると伺いましたが、”Crazy about me”で、”僕の”虞なんですなー (笑) 

Cat Call

winter liSTening PARTYでタイトル二度見。え?本当ににゃーにゃー歌っている?空耳?と思った曲。東西SHOW合戦の猫中毒の北斗さんと大我君が脳裏にちらついたライブ前。どんなパフォーマンスになるのか、まさかかわいいに全振りしたり...と思っていたりしましたが、さすがSixTONES。しなやかで妖艶で、寄ってきそうでいて懐かない。振付の一見のかわいさで観る人にうぎゃ~って言わせておきながら、超クールに真顔でパフォーマンスする、SixTONESの真骨頂。恐らく今回のライブ中、1,2を争う皆さんの”してやったり”案件なのではないかと想像。

”猫をかぶることも時にはThat's all we need‼”はSixTONESさんの本音なのでしょうね。ところで、”Myao”は何語なんだろ…(meow(英)、mew(米)、miaou(仏)、miau(独)、miao(伊))

ラ・ラ・ラ・ラブストーリー

か・わ・い・い~って全客席が思っていたと思うのですが、ステップは結構な運動強度と思われ。にこやかに飄々と歌い踊って下さって楽しいの極み。渋谷系ど真ん中世代としては”渋谷系”という言葉自体を懐かしんでしまいましたが、所謂渋谷系よりクラシカルなミュージカルを想起。カラフルも素敵だけれど、セピア~モノクロも合いそう。

映像

SixTONESにしては、普通の映像でしたか…いや、私が何か見落としたかな..ええ、変なテイストを期待してしまっているので、そんな目でガン見しています。何なら誰も歌っていないけれど音に合わせて動いてます。休憩なんて、してませんっ

マスカラ

よくぞAfrobeats Remixを採用して下さった(涙)。一番好きなアレンジ。皆さんの姿こそうっすらとしか見えねど、勝手に身体が動いていました。Afrobeats Remixがかかった時点で、もう私に忖度セトリだと1人確信(笑) 

Imitation Rain

幾度聴いても最敬礼で聴きいってしまう。これも「俺らのアンセム」年々余裕を増して、味わいも変わって。これからも聴き続けたい。

S.I.X~Special Order~フィギュア~RAM-PAM-PAM~WHIP THATメドレー

本当はメドレーではなくて1曲ずつ聴かせて欲しい曲ばかり。でもほぼ6人出ずっぱりのライブの後半も後半にこのメドレーを入れるSixTONESさんは鬼。こちらも跳ぶ、ペンライト振り回す、踊る、に今年は叫ぶ、も加わった上に突然曲が転じるから忙しーい。SixTONESライブ脳トレ

ところで『SixTONESのライブをクラブみたいって言うけどクラブ行ったことあんの?』と慎太郎君が問うたそうですが、 Fantastic Plastic Machineにはまっていた頃行っていたクラブは(当時の勤務地の宇都宮や足利だけれど)こんなに踊り狂ってなかったでーす。

Outrageous

そんな狂乱メドレーの後にまだ「Outrageous」をもってくるSixTONESさん無双。ありがたや。ライブをトレーニングか修行と勘違いしてやいないだろうか。掛け声と共にペンライト振り上げるオタ芸的動き(失礼)動きが楽しくて、声が出せるようになっていて本当によかった。

タイトルから強そうな上に”Nobody can break us down"とか言っておきながら、少し切なげに”Let me hear you scream my name”というかわいさ…

Again

「Rollin’」の熱唱の余熱も残さずすんっと消え、ECでは打って変わって楽しさ一杯の「”Laugh” In the LIFE」ではじけたCHANGE THE ERA。「光る、兆し」をキラキラした約束を胸に幕を下ろし、ECの「Shake it up」で古参ファンの涙を誘ったRough”xxxxxx”。「Good Times」でラストよってジェシー君が予告してにぎやかな多幸感の中の幕引き、Feel da CITY。デビュー曲を最後にもってきたドラマチックなTrack ONE -IMPACT-。眩い光の中「Lifetime」で静かに厳かに終わり、一転賑やかなうやむやでECを盛り上げたon eST。どれも印象的なエンディングばかりでしたが(強いて言えばFeel da CITYの晴れやかなさよならが好きだったかなぁ)これまでで最もひそやかなラスト曲。ご一緒した初SixTONESライブの方が、あれだけアゲアゲした後に、急にしっとり歌って終えられるの、すごいと感心しきりでした。タイトルが表示されるまでこれで終演とは思わなかった人もいたのでは(笑) とはいえVoiceで始まった「慣声の法則」を締めくくるのは「ただこの声を伝えたい、ただその声を聴きたい」というシンプルな願いを歌ったこの曲が至適だったのでしょうね。過去形ではない進行形の私達ではあれどね。そして、アンコールに向けての「Again]ですものね。We'll Be Together.

アンコール

え!?「この星のHIKARI」なのね??と思ったけれど、3年ぶりに声を合わせたこの歌。自分で歌いながら不覚にもうるっとしてしまいました。「Good Luck!」もさすがの最新曲。客席で皆さん一緒に振りができて、楽しゅうございました👍(声出せない日々も幸せで楽しかったですけどね)

残念、選外

初めて聴いた時に胸震えた「Always」。こめられたメッセージも楽曲も声も、想起される情景も美しいの一言で、これをライブで生の声で聴きたかった。ミュージックソンでは喋り続けた後の深夜の歌唱、ありがとうございました。「SUBWAY DREAMS」も刻むリズムの軽快さ「遅延もしちゃう」ところが好きなのです。Talking Rock!誌でトロッコで歌う想定と語ってらしたですが、まさにそれ!「シアター」の段で書いたように、楽曲を無駄にしないSixTONESさんのことだから、いつかどこかのライブで一緒に楽しめることを願いつつ。

 

1月5日のスポーツ各紙はデビューツアー以来かと思われる大きな扱いで、全面4面ぬきとり紙面までありましたね。嬉しくて久々に全紙購入しました。テレビでも様々な場面の映像を流して下さいましたが、どれをとっても絵になっていて、SixTONESのステージ「静止画でも素敵、動けば尚。音声加わったら無敵」だと思いました。コロナ禍のためか、この数年雑誌のステージレポートの写真が皆同じで残念に思っていたので、本当に今回のメディア露出は嬉しくて。衣装もじっくり拝見できてよかったです。

そして「追加」ドーム公演おめでとうございます。発表も皆さんの表情が直接拝見できる席で共有できたのですが、沸く客席と対照的に皆さんは淡々としていらしたのが印象的でした。勿論ドームのあの空間をどのように使いこなして下さるのか、わくわくしますし、心から嬉しく思ってはいるのですが、箱の大きさで箔をつけなくてはならないようなグループではないと思っているので「通過点」「自分達らしい、見たことないようなドーム公演を作りたい」「ドリーミングではなく既に実務に入っている」との浮かれることのない抱負にわが意を得たりと思いました。ここはドームだからこその何か、を拝見できることを期待しています。

今回はまさかの私ご接待構成か、相思相愛か(笑)と夢想してしまうような「私の好きな物尽くし」のライブでしたが、比較的コアな(世界一SixTONESのライブを愛していると自負はしている)SixTONESライブ中毒者としては、尖りに尖った「ついてこられるか?構わねえ 」vs「そうきたかっ!上等だ‼」と唸るようなもの、猿之助さんの仰った最高の誉め言葉のように”歌舞いた”ステージをこれからも作り出して下さることを願っております。

今年も大好きな6人がよいお仕事と人とのご縁に恵まれて、ますますご活躍されんこと、変わらず素敵な人達でいて下さること、そんな環境であることを初詣で祈りました。

好天続きによる乾燥も今日の雨で少しは改善したようですが、どうか喉も身体も、精神もお大事になさいませ。いつでも、どんな北斗さんも応援しています。                              

                                  かしこ

*1:今年は近隣の同業者の急病に暦も手伝い結構忙しく、ツアー中せっかくアップして下さった校内放送を聴くのもちょっとさぼってしまいまして。すみませぬ

*2:SixTONES STYLEのテーマ、トレーニングになりましたね。運動、栄養、心理的サポート、コンディショニング、専門家が御社にいて下さるとよいのですが

*3:年末の雑事諸々は早めに済ませ、大晦日は19時には正座待機でした。めでたくにぎやかな素晴らしいトップバッターぶりでしたね!奇跡の合致の歌詞と番組テーマにも感謝ですね

*4:需要は理解していても特に所謂腐売りは...

*5:生歌唱「Always」他の方々にも聴かせてあげたかった…

*6:ニュース映像でステージ仕様の樹君が映った瞬間の絵の強さときたら

*7:この言葉も使い倒されてちょっと陳腐に感じますが、まさにわちゃわちゃとしかいいようがない

*8:you’re my everithing界で北斗さんがMISIAさん超えを果たしたlove u…みたいな(笑)

*9:Just cut ノイズはCutすればいい~ って、それそのまま北斗さんに贈りたい

番外:2023年1月22日_CDデビュー3周年に寄せて~雑感

自力で音楽ソフト(当時はレコードかカセット)を買えなかった小学校高学年までは父のクラシック全集と母の映画音楽全集ないしはイージーリスニングを無限リピートして聴き続けていた。小学校高学年で出会ったYMO、高校生時はFMから流れてきたフュージョン*1のLPをお小遣いで購入して大事に聴き、長じてラテンジャズやアシッドジャズに嵌っていた20代後半の私は、自らの稼ぎでたまの休日にお大尽なジャケット買いしたCDを研究室や車に積み上げて音楽を満喫していた。

そんな音楽遍歴では10代でクラスが派閥に分かれる程人気だったジャニーズは眼中になく、それを突然大転回させたのは20代後半で友人に誘われたSMAPの野外ライブだった。全てのお客さんを全ての瞬間楽しませるといわんばかりのジャニーズのエンタテインメント性と、そのためのタレントの献身に心打たれた。まだ若くて喋りも歌も上手ではなかったSMAPだったが、360°隙なく”見せる自分”を把握しているかのような木村君に”感心した”*2からだった。その後2002年に嵐の一卵性5つ子のような(当時は)揃ったダンスとライブ構成、アリーナで気球飛ばしたり缶蹴り始めたりしてしまう自由さ*3に惹かれて当時は関東限定マイナーアイドルだった*4嵐ヲタになった。そして2016年、2015年紅白で"私に爪痕を残した(笑)"中島健人を観たくて観覧に行った少クラ*5SixTONESに会えたのは僥倖だった。最初に見た時はまだJr.の区別もつかないながら、シルバーのスーツで歌う「この星のHIKARI」に「2人歌える子がいるJr.グループ強い」と思った。次に見た時はソファを配して私服で「太陽のあたる場所」を歌っていてアクロバットも含めた軽やかさ、和やかさ、演出の世界観に目を奪われたし、また別の時は騎馬戦のような櫓を組んでメドレーをがなっている(Drop the beat SixTONES)姿に、明らかに他のJr.と違う何か、を作り出そうという気概を感じた。決定打は「THE D-MOTION」だった。パフォーマンスの斬新さに心奪われて何回繰返し録画を観た事だろう。

それまでの推しグループの在り方を、楽曲も演奏者も最高なのに歌が...とか、冠バラエティに忙しすぎてパフォーマンスが疎かになっているのではないか、等残念に思っていたところに、声よし歌よし、選曲よし、意表をつくパフォーマンス、尖った構成、人を食ったような発言から伺える賢さ、どんな衣装も着こなすセンスと容姿、そして各人の背負う物語性*6、全てが魅力的で、そんなSixTONESを奇跡だと思った。
2017年2月の東西SHOW合戦が初のSixTONESの現場。さる事件の翌日で、雰囲気を想像してこわごわ入った客席が全くの平静で大人なスルー体制だった事に、よいファンがついているのだと、さらに推せると確信した。そこからは完全にSixTONES一推しとなった。私にとどめを刺した「Amazing!!!!!!」観たさに足を運んだジャニーズ大運動会で、意外にも足が速かった北斗君に落とされたのが4月だった。

2018年カレンダーDATA BOOKのジェシー君の「オレはもっと何をしたらいいのだろう?」という問いに、拡大解釈かもしれなかったがこちらの胸まで痛くなるような焦燥を感じとった。努力を尽くしてなお「何をしたらいいのだろう?」とひっそりファンに問いかけてしまう彼らに対して、努力や実力だけではどうにもならないとファンでも推測できる事(=CDデビュー*7 )を願っているとは、残酷に思えてとても伝えることはできなかった。彼らがデビューできないのなら、ジャニーズのデビューという概念の方こそ形骸化していると思う一方で、既に年中現場があって忙しかったから、ただ目の前のことを一つ一つ実績として積み上げていく先にそれはある、とも思っていた。仮にCDデビューという形がなくとも、少なくともファンは彼らの価値をわかっているし「どこにいるか、より、そこでどこまでやるか」が重要なのではないかと思っていた。

当時自分の行く様々な公演で、見学に来ていたSixTONESメンバーをよく見かけていたから、先鋭にみえても彼らならジャニーズの伝統も守りつつ、それ以上の物を作り出していってくれると確信していた。当時の演出や構成が大好きだったので、それがメンバー発信ならば自信を持って欲しいし、スタッフ由来なら本当にそのスタッフさんを大事にしてついていってほしいと、そう願っていた。時を経て2023年の+act誌で、樹君が今も「彼らからお願いして」サンチェさんにライブ構成をみて頂いていると読んだのも、時代遅れなどと揶揄されることもあるジャニーズの伝統を踏襲しつつ、音楽誌に評価されるような新しい事もできていると改めて証明されているようで本当に嬉しかった*8

賛否両論あった公式Youtube開始の決定には、自分は諸手を挙げて賛成だった。SixTONESとスタッフの意思決定のセンスを信頼していたから、King &Princeデビューで広がったのか狭まったのかわからない突破口*9の可能性に、とにかく手をあげてくれた事が嬉しかったし、私自身はのんきに成功するとしか思っていなかった。そして、YouTubeの顛末といえばまさにその後の大躍進の礎になったのだった*10


2019年8月8日。ドームでデビュー発表を目の当たりにしても驚く程平静だった自分。彼らの実力なら当然だと思っていたからだし、何より「大変なのは、これからだ」と思っていたというのもある*11。むしろ嬉しかったのはソニー所属ということだった。YouTubeスタッフとの絶大な信頼関係もそうだけれど、彼らはきちんと大人の意見を容れて、その上で自分達の意志も通しているのだと思う。歴史を誇りながら新進気鋭のアーティストの発掘、SNS活用も上手なソニーの辣腕スタッフの手が加わったSixTONESが本当に楽しみでわくわくした。そしてデビュー発表からの彼らの言葉や態度がまた泣かせる程素敵だった。デビューシングルの宣伝の言が、曰く「全身全霊で最高のものを作りました。自信があります。ちょっとだけ頼らせてください」。その品のよさと筋の通った考え方に感動して、友人に語るたびに涙声寸前だった当時(笑)。地位を得ることを目標に能力を発揮する人達を否定はしないが、よいものを創り出す事に重きをおく人達であってくれた事が心底嬉しかった。もうちょっとがつがつしてくれてもよいのにと思いつつ「SixTONESというプロジェクトの構成員」を勝手に自任していた者として、その上品さを保ったまま大きくなって欲しいと願った*12
2020年1月22日、日本で初の新型コロナウイルス感染症患者が報告されてから1週間。この後数年間、未知のウイルスに全世界が蹂躙され、エンターテインメントどころか日常生活を普通に送ることすら叶わぬ世界がやってくるとまでは思わなかったあの日。渋谷等でCDショップを回って”円盤発売=デビュー”のお祭り騒ぎに参加し、Jr.時代から苦楽をともにしてきた友人達と祝杯をあげて帰宅。21日に早々に手に入れていたCDと、当日のお祭り気分に乗じて買い足した数枚を、SixTONESの円盤を並べるためにデビュー発表の遙か前から設置していた天井まであるCDラックに収めた。他グループでは初回盤しか購入しない私が珍しく複数種を何組も買ってしまったデビュー盤をうっとり1列に並べたそのCD棚は、今やSixTONESの円盤のディスプレイが2段を占めている。Jr.なら叶わなかったろうYOSHIKIさんや常田さんとのご縁、やはりCDデビューは素敵だった。

ソニーさんの偏差値高い、茶目っ気あるSNS展開も楽しかった。事務所がしかけた”vs"のため、遠征に出た福岡の帰りの空港バスで23時59分まで曲名を連ねた呟きをし、リツイートし続けたのなど、今や懐かしい苦笑物の記憶だが、お陰で彼らには生涯”デビュー盤ミリオン”の称号が冠されたのだから、よいではないか。3年も経てば当時のいやな感じも、わだかまりも、ま、いっか、当人達はなにも思っていない、単なるファン同士の代理戦争だったよと笑える話になっているのだ。

2枚目のNAVIGATORがデビュー曲と全く違うアプローチで軽々と2曲目の壁を超えてきたのも、そのMVが超クールだったことも、カップリング曲がさらによかったことも想定以上だった。その後も広がっていく音楽活動の幅に、最初は「ふ~ん?」と感じる曲も混じるようになったが、聴き続けたりライブパフォーマンスを見たりで印象を転じ、結局”折伏”されて愛聴曲になっている。円盤発売の度のSNS展開も恒例の楽しみになり、円盤発売日に今も訪れる渋谷のCD店の展示の列に並ぶ人々の数も、平積みの円盤を手に取る人達の表情も、今だコロナ禍にあるというのに、Imitation Rainの時のそれを凌ぐように思える。それが決して張りぼての、数だけの人気ではなく、聴く毎に彼らの歌唱技術が素人の自分にもわかるレベルで上達し、表現の幅が拡がり続けていることも嬉しい。THE FISRST TAKEに挑んだり、生バンドとのセッションを配信したり、音楽を発信する場の開拓も怠らない。新たな音楽分野の導入に貪欲なSixTONESとさすがの広い守備範囲のソニースタッフさんの相性のよさは変わらないし、古くからの事務所スタッフさん、YouTubeスタッフさん、レギュラー番組スタッフさん、様々な大人とうまくやっていけていることが窺えて幸せだ。恐らく事務所上層部の”お気に”でなくとも価値と実力は認めてもらっていると思っているし*13、そんな立ち位置であればこその自由度の高さもあろうというものだ。何より、発言を渉猟し得る限りでは、今でも彼らの総意が地に足着いたもので全く浮かれや奢りが窺えない事が嬉しい。

もう3周年、まだ3周年。世界一SixTONESのライブを愛していると勝手に自負する者から、これからも、よろしくね💐





 

*1:Earl Klugh、Yellowjackets、Lee Ritenour、Grover Washinton Jr.Bob James...

*2:残念ながら、所謂担当のような”好き”にはならなかったのだが、今でも敬意はもっている。同様のポジションは山田涼介君や今の中島健人

*3:とはいえ初めて入ったHERE WE GO!ではMCは凍りつきそうだったし、次に見たときは犬の姿だったけれど(笑)

*4:当時はまだJrだったKAT-TUNに完全に追い越されていたと思う

*5:私を健人に会わせようと友人2人が応募してくれて、2016年は3回も観覧に行かれたのだった

*6:当事者にとっては絶望するような出来事も含まれる来歴を物語性と称してありがたがってよいのか、人としていけないのではないか、とも思うのだが、それが彼らの人となりを作り上げてきた要素であるだろうからご容赦を

*7:タイミングなのか、株式会社としての戦略なのか、ジャニーさんの気まぐれなのか...

*8:立ち読みしていた+act誌を抱きしめちゃったよ。今度買います

*9:Jr.はこれ以上CDデビューはないと宣告されていた等と巷間伝えられていた中、久々のデビューだった

*10:だから私はSNSがある時代故、何かというと”ファンの要望”という名の浅知恵で自分の思い通りになっていないことにぴーぴーわめく輩に、プロの決断なめんなよ、どれだけの専門家がどれだけの費用をかけて行っていることだと思っているのか、と言いたくなる。言わないけど

*11:華々しい門出を飾って空中分解したグループあり、鳴かず飛ばずのグループあり、なのだ

*12:その後彼ら発信で"team SixTONES”という概念が表明されて、勝手な自認していて大丈夫だったのだと安堵したものだった(笑)

*13:サンチェさんの下にいるなんて立ち回りのうまさも感じてしまう(笑)。私はジュリーさんもサンチェさんも好きなのだ

056: 2022年11月11日_すずめの戸締まり、Good Luck!/ふたり、LIFE!・音ダメ家族、CLASSY. 2022年12月号

拝啓

くらがりへ人の消えゆく冬隣*1

 先日NHKホールでの山下達郎さんのライブに行ったのですが、明治神宮前駅から地上に出たらとっぷり暗くて、あんな都心なのに街路の灯りを外れると前の人を見失う程でした。もう晩秋ですね...そんな書き出しをした途端にツアーが発表され。SixTONES暦で生きる私はのんびりすることを許されないのか、上等だ!と申込を済ませ、気が付けば暦の上では冬。新曲関連のパフォーマンスのみならず、コラボ企画の多様さに”国民的アニメ”に出演するとはこういうことかと実感させられる「すずめの戸締まり」関連での露出の多さ。追うこちらが大変なのだから、年末年始の予定もぎっしりであろう北斗さんのお忙しさは想像に難くない。それでも、一つ一つのお仕事を言われるがままに流されてこなすのではなく、それぞれの目的と意味を理解して明確な目標をもって誠実にあたられていることが常に伝わってくるので、嬉しく心強く思いながら拝見しています。

そんな立冬の日に「すずめの戸締まり」のIMAX先行上映に行ってきました。完成披露試写会は残念ながら自宅待機組でしたがメディアの高評価は伝わってきていましたし、どの媒体からも北斗さんの澄んで悟ったような目、充実感を湛えた表情が見てとれて。成し遂げたことへの自信が窺えるようで嬉しくて。”ワックワクして”待った初見はIMAXシアターでは一番好きな池袋グランドサンシャインの後方列!見終えてただ、ただ、北斗さんが本当によいお仕事に携わられたのだと心から喜び、しみじみ幸せに感じました。まずは、私的松村北斗史上最高傑作の一つという評を謹呈します。

初の声優、しかも椅子に感情をのせて演技するのは*2難しそうですが、声自体が美しく聴きやすく、変な作為や癖がない言葉が率直に伝わってきて、期待以上の声優ぶりでした。新海監督が安心感を与えて力を発揮できるようにさせて下さったお陰もありましょうし、北斗さんの声や技術だけでなく人となりを含めて選ばれた草太さんだったこともあるのでしょうか。とはいえ草太さんに使命感や自己犠牲を感じこそすれ、監督の仰る神聖さはあまり感じられず。確かにこれまでも北斗さんの役は、祝詞を唱えたり矢で祓ったり鍵で封じたり*3 *4英霊になってしまわれたりする何やら神聖な設定で、もれなく眉目秀麗。でも本作の草太さんは「ありがとう」の声やすずめを思い遣る言葉の抑揚に現れる誠実さのみならず、例えば焼きうどんにポテサラトッピングにどんびきする呟きや、何気ないリアクションにコミカルさもあって。登場した瞬間に「きれい…」とJKに頬赤らめさせてしまう「ザ・イケメン」でありながら、どこかおかしみの滲む、そんな草太さんの人物(椅子)造形は北斗さんだからこそ表現できたキャラクターのように思いました。監督が北斗さんの不憫さや面白さに気付いて書かれたのか、北斗さんという声優を通じて表現がそうなったのか。実際、あて書きとも思える位、人・椅子問わず草太さんの役柄、台詞、動き...様々な場面の草太さんから「私の知る北斗さん」が匂い立ってくるようで、それが本当に心楽しくて。そんな役、制作者に出会える冥利を想像して、私まで幸せになるのです。本作を通じて北斗さんの幅広い表現力、多様な魅力を多くの人に知って頂けそうで嬉しいです。
お話自体は「鹿男あをによし」や「帝都大戦」などでも親しんできた、人の世に災厄をもたらすものを封じ込める*5というSF奇譚的モチーフに、震災の記憶と日本の地方の在り方という社会的テーマを絡めたもの。考察は再見時と原作読了後に譲るとして、すずめの真っ直ぐな逞しさに加え、ヒーロー然としていない草太さんの存在があったから、新海監督作品に私が感じてしまう一種の気恥ずかしさを本作では感じずに、照れや戸惑いなく初見では冒険活劇と成長譚として堪能できたのだと思います。背景にある東日本大震災の描写には被害の少なかった私ですら心の奥の記憶を揺さぶられて涙腺がゆるみそうだったので、仙台で被災した友人に勧めることは躊躇してしまいますが。                                想像以上に心躍らされたのは草太=椅子の躍動感でした*6。椅子アクション史上最高の*7縦横無尽の動き、ミミズが天に拡がり蠢く様のスケール感は大きいスクリーンで観てこその醍醐味でした。「天気の子」「君の名は」はビスタサイズだったと思うのですが、本作がシネスコアスペクト比で製作されたのは、その水平方向の拡がりと、北へ向かうロードムービーとしての性質からなのでしょうか。そのためせっかくの池袋の25.8×18.9m IMAXスクリーンで上下に余白ができてしまっていたのだけが残念。12日のTOHOシネマズ日比谷の新海監督ティーチイン付上映はスクリーン12のVIVEオーディオ、13日は夫を連れてTCX+DOLBY ATMOSで、と其々お気に入りのスクリーンで鑑賞するので、見比べ・聴き比べるのも楽しみです。
「すずめの戸締まり」は、私が目撃してきた中でも北斗さんにとっての大きな転換点に思えるのです。それは内容や実績というよりも北斗さんの在り方、受け止め方という点で、理由はこの宣伝期間の映像、写真の表情が、前述のように何か悟りを開いたかのような、すっきりした穏やかなものだったことです。年下の原さんを見守る立場だからなのか、監督はじめとする制作陣に委ねることができたという新しい経験によるものなのか。

撮影時期は異なるかもしれませんが2022年12月号のCLASSY.、特に表紙のシンプルさも通じるものがあるように思います。2021年の露出が「考えぬいた末に次々変化球を投げている」感じであったのに対して、こちらは「直球をど真ん中に投げこんでいるのにバットもでない」感じ。素をそのまま晒して堂々としている感じが(27歳の青年を評する言葉として失礼かと思うのですが)”大人びて”いて。p.136-7ははっとするような初めて見る表情で、思えばそれが一連の「すずめの戸締まり」プロモーションで見た表情と同じなのです。変化球を投げ分ける北斗さんの努力も素敵だと思うのですが、今回のCLASSY.の素のような安定感と落ちついた佇まいは、大好きです。

転換点といえばLIFE!出演も。北斗さんの形態模写と、挙動不審を演じる様が絶品だと常々思っていたので嬉しくて、NHKさんにますます足を向けて寝られなくなる案件でした。形態模写についてはMCの雌鳥や、Feel da CITYでのWHIP THATでジェシー君の動きを誰よりも忠実になぞりながら1.5倍くらいの誇張が混じる絶妙な感じが好例です。比べるわけではありませんが、強いて例えるならSMAP×SMAPの木村君のジャック・スパロウの再現度+誇張(本物はあんなに手をひらひらさせていないはずだけれど、なぜかわかるー!と思ってしまう、それ)を大真面目にするおかしみ。それが大好きなので、LIFE!のトップガン・マーヴェリックは心底楽しく拝見しました。ダンスがついつい美しくなってしまったり、旋回して飛び去る様が優美であればある程、笑えてしまう。しっかり練られたコント*8をどれだけ大真面目に演じられるか、それで可笑しさを醸し出せるか、を要求される内容には北斗さんはお誂え向きだと思った次第。そしてもう一つ、私の大好きな「挙動不審を演じる松村北斗」。「追放?!」の表情が秀逸で、赤い彗星に怯えうろたえる姿が真に迫る程可笑しみが増して秀逸でした。ただ、私達世代では一般常識に近い赤い彗星ネタ、北斗さんファン層のどのくらいがご存じかしら。

LIFE!は連休に旧奈良監獄を訪れた帰路にあたりリアルタイムで観られなかったのが残念でしたが「音ダメ」は北斗さんが泣かないように(笑)、ジムにも行かずに日本シリーズとテレビ2台で待機して、ちゃんとリアタイ致しました。誰よりもリアクションが大きい北斗さんに、そんなにタライ落とされたかったのかとひとしきりツッコミつつ。ドアップの顔芸も、説明が長くなってしまうのも、痛そうな低周波も(?)伸び伸び楽しそうで、こちらも嬉しくなってしまう。

この時もそうですが、北斗さんネットニュースの見出しになりやすいパワーワードを発されますよね。最近、媒体によってとりあげる部分が全部違ったりして、どれだけ使いやすいインパクトある言葉を高密度で詰め込んでコメントされているのかと。素晴らしい!

Good Luck!/ふたり/Sing Along

おっと、こちらが本業でしたね。声優さんでも芸人さんでもない(笑)
SixTONESさんが口をそろえて明るさを強調する円盤。ジャケット写真のちょっといけずな表情の北斗さんもよいですね。ジャケットやスリーブの色とレーベルの色が3種類で分けられているのでケースにしまうときわかりやすい*9。スリーブの裏の愛らしい模様(この仕様は初めてですよね?)に気付いた時は裏地に凝る着物道楽かい、と。今回もフィジカル円盤への愛が見えて嬉しい。

「Good Luck!」はブラスが快活で、ドラムのリズムが最高。「PARTY PEOPLE」にも思ったのですが、これ太鼓の達人にならないかな~と思いながら車のハンドル叩いています。ライブで一緒に踊る日も楽しみ!TikTok見ています。「0点でも100点でも自分らしけりゃ満点」の心境には、準備不足で軽々に事にあたる態度では至れないから、樹君の檄が利いていて。その歌詞に説得力をもたせられる、日々のSixTONESさんの努力と進歩、人の前に立つ人の影の苦労を思ってしまったりして。私にとっては、売上枚数やランキングより*10、音楽の技術を向上させ、センスが光るよい楽曲を地道に発表して着実に実績を積み上げていって下さることが重要なので、この歌詞、そのままSixTONESさんにお返し申す所存。

「ふたり」のピアノ旋律の美しきこと。冒頭約40秒の、風音、水音、街の音、波の音、布はためく音...環境音のみで始まるMVの斬新さ。それが各々の物語を予感させる。こちらを見つめる北斗さんの眼、窓から垣間見える海、画面の99%を占める空に、すっと存在する髙地優吾。はためく洗濯物...幸せな日常の映像や温かい歌声に宿る微妙な陰影に、CDで聴く前はドラマの内容も手伝って温かさの中の寂寥感が前に立って聴こえました。
けれど、歌詞を全部聴くと印象は変わる。儚さどころか、人としての信頼を確立している相手を歌っているよう。歌詞にどれほどメンバーの意向が反映されるのかはわかりませんが、過去の曲や文章に繰返し登場する「星のない夜」に共にいた人。「孤独を感じた夜、未来に怯えた夜」に「わたしだけを照らして」くれ「止まない雨の中、見えない星の下」「ずっとわたしを信じてくれ」た「あなた」への信頼は、SixTONESさんが抱いてきたそれではないだろうか。しかし、ここでも現れるSixTONESさんの「人間関係における距離感」に顕著な遠慮。「抱き合って向き合って」「何回も名前を呼んでくれ」ている関係性にも関わらず、「あなた」の名前は「呼んでもいいかな?」なのは何故?その、謎の距離感は恋人や伴侶ではなく、私達でもあるのかと。この仮定が正しいならば、私もあなた達の「心の中の一輪の花」のような存在でありたい。
と、御年69歳にして3時間歌い喋り続けてアンコールではNHKホール3階席にマイク通さず声を届けた達郎さんと、その何十年来のファンとの関係性を目の当たりにして、かくあれかしと思いながら。
(ところで、リズム刻むぺちぺちいう楽器、あれは何なのでしょうか?)

他の2曲とも異なる爽やかな曲調の「Sing Along」は、その2曲を包含するようなメッセージ性。
「ひとりじゃない」「ずっと側で見ているから」に励まされる幸せと同時に「不確かな未来 乗りこなす」ことを決断された方達のファンを思うと、「明日へ続く道、歌いながら進むよ」と歌ってくださることのありがたさ、当り前ではないのだ、としみじみ思うsynchronicity。そんな、歌詞が、なかなかしみるご時世です。

「わたし-Lo-Fi ChillHop Remixー」...Lo-Fi ChillHop…とは、なんぞや?から入ったこのremix。知識なしで聴いた瞬間、カフェオレ片手に原田知世さんが微笑み、アンニュイなクレモンティーヌがまったり歌い、の図が脳裏に。そして、混入する謎の声(?)”やみー”(と呼んでいる)。調べてみれば、なる程、「録音環境の悪い」環境音やノイズが含みのアナログ感、醸しだされる懐かしい雰囲気、との由。…私の昭和な感想、当たらずと言えど、遠からず(笑) 。はい、勉強になります。ありがとう。

 本日は「すずめの戸締まり」公開日。この手紙を北斗さんが目にされるとしたら、その頃には世間の大絶賛を浴びて、作品も大ヒットしていることでしょう。一般上映も販売開始した6日深夜にスクリーン数を見て圧倒され、公開前日の席の埋まり方に改めて凄い作品だと慄いております。他の方の感想や映画評を目にしてしまう前にまっさらな状態で「私の感想」を書きたかったので、今日、えいっと書き上げてしまっています。事前に知ってしまうのも嬉しくないなと思って、長年「この表紙を飾ったら本物」と思ってきた念願の日経エンタテインメント北斗さん表紙号も書き終えるまで開かずに我慢しているのです(笑) 
本来は「戸締まり前」にFeel da CITY円盤の感想をお送りするつもりで書き始め、「流星の音色」の感想や、南座観劇の際訪れた大城神社、髙地君堕ちに怯えながら3回観劇した「夏の夜の夢」(なんと、夏組パックに魅入られまして(笑))のこと、奈良監獄訪問の話など、ひどく平和な話を書いてお送りするつもりでのんびりしていた10月。前述のようにツアー発表のような心躍ることもあったのですが、何やら御社の周りがざわつきはじめ。そのような心中穏やかでない時期に「Good Luck!」「ふたり」「Sing Along」には心強さを覚えました。ただ、去る人達を応援し、力をもらってきた友人達の心中を思うと、なかなか自分だけ幸せでのんきな言葉を綴るには気が引けてしまったりして。はい、いつもながらのご無沙汰のいいわけなのですが。

ともあれ今日は北斗さんが「世界に」でる大事な作品の公開日*11。「すずめの戸締まり」と北斗さんの声の演技が末永く世の人達に愛されんことをお祈りしつつ、確信しつつ。
いつでも、「どんな北斗さんも」応援しています。                                             

                                 かしこ

2022年11月11日 行ってきます、の佳き日に        

*1:角川源義

*2:あまりに早々に椅子に変えられて驚きましたよね。人間より椅子でいる時間の長かったこと(笑) 

*3:そういえば、「真っ赤な嘘」の扉抜けは、この映画の匂わせではない....ですよね?

*4:後で考えると鍵で封じるのは本作でした。明け方に書いていると間違える

*5:禍の元を滅ぼさずに封じ込めるという発想は世界共通なのか、日本的なのでしょうか。東京の後ろ戸は大手町の将門塚かしら想像して観ていたのですが、池袋に行くのに乗り換えたばかりのお茶の水だったので、おおーあそこか!と。浪人生の怨念は籠もっていそうな土地ではありますね

*6:椅子ファンになり、段ボールクラフトキット買ってしまいました(笑) その後ボールチェーン付きぬいぐるみまで買ってしまい。こういうグッズあまり買わない私としたことが…

*7:いや、当然、そんなジャンルないわけですが

*8:最近は”ホーム”以外の「激レアさん」や生放送の「ラヴィット!」などでもフリートークで北斗さんの豊富で独特な語彙と会話の反射神経が発揮されていて、嬉しいのですよね

*9:購入時って複数種類の盤を一度に出して喜んでいるので、戻すのに判別しやすいと助かるのです

*10:十分素晴らしい実績、数だと思いますけれど、口さがないメディアは順列をつけるので

*11:海外上映の際、アニメは字幕上映が多いと聞きました。日本語がわからずとも声にこもる感情はうけとってもらえますものね。規模やステイタスが好きなのではなく、関わる作品の質や内容、それを私が好きかどうか、が重要ではあるものの、北斗さんの謙虚さに同居する野心も、方向性と順序が正しいと好ましく思うので、やはりこれは嬉しいことなのです

055: 2022年8月28日_僕たちは戦争を知らない、PARTY PEOPLE、summer liSTening PARTY 2022、アトリエの前で第33回

一筆申し上げます。

 七十二候の天地始粛(てんちはじめてさむし)の名の通りしのぎやすい気温の日曜日。10日程更新の途絶えた北斗學園に、何か新しい挑戦をされているのか、あるいは体調不良...などと案じておりましたが、昨日のオールナイトニッポンで樹君の言葉に安心しました。お元気でいらっしゃるようで何よりです。

初日から職場で新型コロナウイルス感染者が複数発生し大わらわだった8月、この1か月を支えてくれたSixTONESの活動へのお礼と感想を、夏の便箋(晩夏の思い出、的な何かだと言い訳して..)を使える最後のかけこみ週末に認めております。

8月5日 PARTY PEOPLE 

今風と思いきや少し懐しめの旋律で、夏+ぱりぴ、からは遥か遠い夫も一度耳にしてすぐ口ずさんでいた親しみやすさ。さすがにTikTokに踊ってみた投稿する程鉄面皮ではないけれど、少クラ観覧では「振り完璧ですね」って隣のJKにお褒めにあずかりましたぜ(笑) 

粗めの画質のMVから伝わるのは、ぎらぎらするでもなく爽やかでもない夏。歌詞のわりには生々しい肉感もなく、汗も海の塩のべたつきも感じない。中東の乾いた熱風が吹き抜けていく印象。この””湿度の低さ”がSixTONESの特筆すべき個性だとは、後日Aぇグループさんの湿度高い「Special Order」を見てはっと気付いたように思った点で、私のSixTONESを最も好きなところの一つ。だから夏の盛りに聴き続けられるし、夏が過ぎても、次の夏も、飽きず聴き続けられると思うのです。

8月12日 summer liSTening PARTY 2022

台風にも感染症にも左右されず、紫外線も気にせず家で楽しめるパーティ、別件でLINEしていた友人達ももれなく皆参加していて盛り上がった楽しい時間をありがとうございました。アーカイブも家事や運転の駆動力に活用させて頂いています。

夏?と思った「ST」や「Hysteria」はセットリストに入ってしまえば確かに夏だったし、逆に私の中ではザ・夏という感じの「Call me」「FASHION」「Bell」等は冬曲だと言われれば納得してしまう気もして、SixTONESの楽曲のステレオタイプを排した汎用性、普遍性が、”夏”を打ち出したセットリストで逆に実感されるという面白さ。

前述の”湿度”という観点では、SixTONESの楽曲の中で「マスカラ」だけは超高湿度に感じたけれど、それは常田さんの作家性でしょうか。真夏、懊悩、濃ピンク、重苦しい空気...それがAfrobeatsで一変、サウダージを漂わせるようになったことにリミックスの奥深さとSixTONESの個性の強さを感じました。北斗さんが原曲でなくEmotional Afrobeats Remixを選んでくれて、私達、気があっちゃったかも、などと勝手に盛り上がってしまったのも夏の夜のせい(笑)

8月14日 僕たちは戦争を知らない

明確な意図をもって制作された番組であるからこそ、メッセージの押しつけや硬直性を感じさせなかったのが素敵だったと思います。悲惨な体験談への慨嘆や史実の一面的な否定でなく、過去を踏まえた上での”今”に焦点を当て、静かな意思表示をもって結論を視聴者に委ねるような番組の姿勢を好ましく受け取りました。その姿勢に寄与したのが、ご自分の役割を弁えて体験談を受け止め咀嚼し、紋切りでない自分の考えを柔らかく平易な自分の言葉で語っておられた4人の聞き手/伝え手であったと、たのもしく拝見した次第。

特に「その人ならでは」の視点が印象に残ったのは北斗さんと風磨君でした。風磨君が「傷つける側の辛さ」に言及した事に、出自的にも能力的にも性格的にも”強者”の彼の「デキる子」ならではの誰かを傷つけてきたかもしれないという懸念が背景にあったのかなという個人的興味ではありましたが*1

北斗さんにはまず「当事者にしかわかり得ない事がある」という聞き手としての謙虚な線引きがあって、それが語り手の言葉を夾雑物のない明瞭さで視聴者に届けさせたと思います。「口ごもってしまった」と反省していらしたですが、聞き手の態度としては私はそこに誠実さと真実味を感じました。

北斗さんの主観として最後に語られたのが池田さんのたくましさに対する感嘆であったことは、私には新鮮な驚きであり、同時に喜びでした。北斗さんが率直に人間の強さや人生に対する希望を口にされたことに意表をつかれたのは私がやはり「知った気になっているだけ」なのかもしれませんが(笑) それが戦死してもなおその願いが物語を貫き孫の代まで存在し続けた稔さんを”生きた”経験を通じて得たものであったのかしら、などと想像して勝手に嬉しくなってみたりして。後日「自分にしか出せない歌声を求めて練習し」との一節を読みましたが、今回の取材は確かに「今の北斗さんにしかできない、だからこそできる」ものであったと私は思いました。

ラジオ・チャリティミュージックソンでの見事なレポートを聴いた時にも思ったのですが、丁寧な取材準備と理解、聞き手としての真摯さ、語り手(取材対象)と視聴者との間をとりもつ洞察力とが窺えて、北斗さんのインタビューのお仕事をもっと見てみたいと思いました。人に対する想像力や興味と「人見知り」は相反するようでいて実は相関していると思うので、様々な人にインタビュアーとして関わるお仕事は北斗さんに向いていそうではありませんか?それが内在する要素を絞り出す仕事(のように思える)演技や、自分という媒体を通じて事象を伝えるキャスターなどとは違い、他の人の多様な”成分”を吸収できる事に繋がって、北斗さんに面白い影響をもたらしたりしないかな、などと思ったりしているのです。ふふふ…(単なる想像です。ですぎたものいいですみません…)

8月22日 アトリエの前で 第33回

意味や背景を深読みしようと数回読んで、結局余計な考えをいれずにそのまま文章を味わうことにしました。これまでより論旨がすっきりして洗練された文章なので、きっとそれがよい読み方なのだと思います。

「声を出すのが何故か億劫になる緊張感に自分の常識を再確認する」

「五感と対象物の間で気付かれずに満ちている空気」ならではの「優越」

「互いの罪と人間の欲の匂いを嗅ぎ合い、僕はここに居ていいんだと安心する」

「寒いからという理由で駅まで走って行き、結局は早く着いてしまった駅で寒さに凍え」

このあたり、誠に我が愛するザッツ松村北斗な言い回し。あなたは既に日向を歩いているよと言いたくなれど、「俳優としても認知してくれている人も現れてきている」という現在進行形を用いてしまう慎重さよ!文章の一言一句にそんないじらしく愛すべき松村が満ちていて、私はつい、最近知ったこんな言葉を、知ったかぶりして書いてみたくなるのです。

「役者になりたい人は役者になれない。芝居をしたい人が役者になれる」 *2

私の知る限りでは最も「したい事」を追求せんとしているのがSixTONESの作品づくりであり、北斗さんのお芝居。だからきっとこの論でいえば「なれる」人達であろうし、少なくとも私はそんな姿勢が好きで、だからきっと応援し続けて行くのだと思っています。

 

窓からの夜風は涼しくなり、お腹にブランケットをかけただけでは風邪をひいてしまいそうですが、日陰にも日向にも居心地のよさを見出せる秋も、もうすぐ。メンバーの皆さんも個人仕事の正念場ですね。北斗さんのお仕事も詳らかにされる日を心待ちにしております。カレーライスも福神漬の歯ごたえあってこそ何倍も美味しい。福神漬け、増し増しで頂戴(笑)
いつでも、どんな北斗さんも、応援しています。          
        

                                   かしこ 



*1:私も「足を踏まれる方は当然痛いけれど、踏んだ方も時に痛いと思っているし、前者は普遍的だが、後者の痛みは一部の人にしかわからない」と自戒含みで思うので。北斗さんはその両者を同じ鋭さをもって実感できる稀有な人なのではないかと思っているのです

*2:佐藤二朗さんが「画家になりたい人は画家になれない。絵を描きたい人が画家になれる」をもとにして、ご自分について振り返って書かれた文章にあった言葉です

054: 2022年7月18日_わたし

拝啓

 あっさりと退いた梅雨が戻った小暑の候、北斗さんには健やかにお過ごしでしょうか...「ワガママ彼女に振り回されるラブコメ気圧エンジョイ勢」でしたね。お大事に。

劇中突然流れた「わたし」も、広く受け入れられ嬉しいですね。誕生日ウィークと重なったプロモーションも楽しそうで何よりでした。皆さんの発言を「コンセプトや理由は比較的後付けよね、この人達」と含み笑いしながら楽しんでいますが*1、それは聴いていてSixTONESの楽曲からはまず「自分達がこれが好きだから演りたいのだよ」という無心の丹精が伝わってくるように思うからです。

他のグループと比べられるのがあまり気分よいものでなかったら申し訳ないのですが、例えばSexy Zoneの作品には情報収集・分析と学習に長けた秀才にありがちなマーケター的意図が透見され、King & Princeには主にファン目線(ファンサービス的意図)でのコンセプトありき、をアルバムからもライブからも濃く感じるように思います。もちろんそれはネガティブな意味ではありませんし、そういう視点はSixTONESの楽曲制作過程にもあることでしょうけれど、私は彼らの作品からより”商品”としての意識を感じ、SixTONESのそれからは、より嗜好品たる*2音楽、好きな音への傾注、鳶飛魚躍を感じる。多様な楽曲の中には「自分としては第一選択ではない」ものも混じるのでしょうけれど、多数決の結果を受け容れ演じることをまっとうしようとする職人的な*3姿勢も聴こえてくるように思える。

私も音に対する感性がSixTONES制作陣と近いとは思いつつも、中には最初から好みのど真ん中というわけでない曲もあるのです。しかし聴きこむことやパフォーマンスを見て好きになったり、最終的には演じている人こみ、作品と作り手の総合力にひれ伏していることがほとんど*4 。「好きな人の好きな物なら好き」などというかわいらしい心根の持ち主ではないのにね(笑)

わたし

予告なく「ありえなーい」と一節流れた瞬間に柊麿、もとい松村北斗の声とわかった全国津々浦々の方々にも私にも脳に”SixTONESニューロン*5あるいは”松村北斗細胞”が形成されているのでしょうね。

恋をするたび自分を見失う(笑)SixTONESさん。「僕が僕じゃないみたいだ」では己の感情の変化が「君のせい」と二人称も含めた内容で「笑える」し、それに対する戸惑いも「君といる時の自分が好き、こんな僕も悪くない」と前向き。

一方「わりと上手くやれている」「わたし」の確立された自我と生活を「何気ない言葉」に「奪われ」、唯一現れる「あなた」は「見せたくない」拒否の対象。「『わたし』がおいつかない」と感じる程に混乱させる存在への違和感と「無駄な事で疲れる位なら」という後ろ向きさが根底にある。内容こそ恋愛の手前でうだうだしているこの曲。只中で放り出された「ってあなた」と状況は異なりますが空気が似ているように思い(共に佐伯youthKさん作だったのですね)聴き比べてみました。曲調や北斗さんの声の使い方は確かに似ているようですが、発表当時は非常に洗練された歌唱だと思っていた「ってあなた」から、さらに声が深くなり、表現力や歌唱の成熟度が増しているように感じられて驚きました。「その意味は?その価値は?」の諧調の美しさが中でもすごく好きです。

ところで「汚れた靴」という言葉。何かの比喩としてSixTONESさんがお好きなのでしょうか。「ST」でも印象的な言葉だったのですが、作者も違うし慣用表現を調べても見あたらず。「ST」では「逃げたり言い出せなかったりで失った過去」の比喩、「わたし」では磨いても”またすぐにどうせ”泥だらけになる(だから無駄な事せずさっさとしまおう)という思考の流れ。気になる言葉なのですよね。

わたしMV

翳りのある繊細なロマンティシズム。ソロムービーは6者6様で、”迷い、戸惑い、憂い”を手や視線の動きで表現する舞踊的な高地君や大我君に対し、動きの少ない演劇的な北斗さん、慎太郎君、樹君。特に北斗さんは”位置の高低”以外ほとんど動かず佇まいや視線で演じている。そして、他の人が「只中の」感情の揺れ動きに見えるのに対し、なぜか既に”後悔”が見えたり、自分を責めるかのように、いじけたように礫を投げだしたりする北斗さんのソロ。渦中で迷う時に、そこに足を踏み入れてしまった事自体を既に悔やむのかしら。

花束という本来甘い物が、その色合いと世界観から渋く控えめなのが、誠にSixTONES *6 

オンガク

音が始まる前のジェシー君の息を吸い込む音が、高く飛ぶ前の準備動作みたいで、本当に何か高くそびえる障壁を跳び越えそうな、そのまま空に飛んでいってしまいそうな高鳴りを感じさせて素敵、素敵*7。「ってあなた」「僕が僕じゃないみたいだ」で聴かれる北斗さんの吸気が短くひっそり不安混じりの集中に聴こえるのに、ジェシー君のそれ*8は深く長めで拡散するように響いて(曲の性格もありましょうが)対照が面白い。最初は単純で明快な曲調だと思っていましたが、聴き重ねてくるとそれが故の安心感。

経験を重ねて醸成された機微を繊細に前向きに綴る歌詞。心燃やし高く帆を張り、と拳を固めた日々から、今や尖らずとも笑みを浮かべて進める確かな足場を得て。愛や恋も飛び越え信頼する”君”とはメンバー、スタッフ、ファンなのか、あるいはオンガクか。たくさん傷ついてきた人達が、今*9、この歌詞を高らかに歌うことの意味に感じいります。「光る、兆し」「NEW WORLD」に連なる曲だと思いますが、その一連の所謂”エモい曲”の中では、一番好き。

「光る、兆し」について「ついつい「迷う」という言葉に心が反応してしまいながら歌っている」と綴った*10北斗さんの、”あの文学賞もんだな”、”一歩ずつ喜怒哀楽とそれ以上を”の希望に満ちた澄んだ高らかな声に迷いはみじんも感じられない。その、過去の傷も今の軋も”無駄なもんはひとつもないさ”と肯定できる「今」への喜び溢れる旋律にこちらも胸が高鳴ります。続く~奏でていこう~重ねていこう~で個性が6つ重なるその美しきこと。数年前には激しく刻むものだった”時”から”時代や老いも君と”の境地に至るの、齢30に満たずして早くない?とツッコミつつ、そうだね、遠く高く飛んでいこうね、と単純に同意してしまうのです。

共鳴 Brave Marching Band Remix

元々好きなブラスの爆音響くRemixにイントロから大喝采。マスカラのAfrobeats arrange同様、原曲より好きかもしれない。マスカラはAfrobeatsに原曲の生々しさが薄められ運転等しながらでも流せる聴きやすさになり、「共鳴」では原曲の生硬さがMarchingの響きとリズムの力強さを得て。でも歌い手6人ともに声が強いから、爆音金管にもマーチングならではの鼓隊のリズムの勢いと迫力にも負けていないのが素晴らしい。初めて聴いた時から「甲子園のスタンドにスーザフォン何本も並べて攻撃回に爆音を響かせて欲しい」と思っていましたが、フラッグ翻したカラーガードが颯爽と行進するマーチングパレードも観てみたい!

ということで、既に次のシングルで「わたし」がアレンジされるなら、”ノスタルジックボサノヴァ”か”エキセントリックタンゴ”か、でも素人の想像の遥か上を行って欲しくもあり...

シアター

「オンガク」を先に聴いて「尖らなくてよくなったSixTONESさん、ふんふーん」と思いながら聴き進めたところで、イントロから不穏で偽悪的な「シアター」。歌いまわしも、誰が誰風になっているかなどと想像しながら聴くのも楽しい。

脳内に映画グランド・ブダペスト・ホテルキッチュな色彩と雪の中列車が橋を渡るシーンとが再生されるのは何故なのかしら。多分「FASHION」のMVのポップ+アバンギャルドキッチュが大好きで、そこがぴったりこの上なくスマートに決まることではSixTONESはジャニーズ随一だと思っているから*11だと思うのです。MVが観たい曲。

LIVE音源3曲

Feel da CITYツアーセットリストから敢えて選べば最愛の3曲。

「Good Times」は客席のClapと歌い手のアドリブが広い空間に響いて宴の多幸感と終わりの寂しさとが想起されてしまうし、「Everlasting」ではアリーナに拡がる夜光虫の海の美しさが蘇る。「WHIP THAT」はスタイリッシュ宴会部長にのせられた狂乱を覚えている身体を動かす(笑) 空間に拡がる音が堪えられない魅力のライブ音源を収録して下さってありがとうございます。が、またライブの空間に浸りたくなってしまう..どうしてくれんだ(笑)

セピア

爽やかな音色に切なくも前向きな?セピア色の写真がモチーフの歌詞に「Link Buds Sーオンガク」の次は「Xperia-セピア」でCMを、と想像。春先の携帯キャリアやスマホのCMってこんな感じの回顧と明るさ爽やかさの綯交ぜではありませんか?

違う曲をSixTONESという人格にかぶせて聴くのも楽しみ。恋愛中のご執心(Hysteria、Mad Love、So Addicted)、叶わぬ愛にも果敢で貪欲(Papercut、Lost City、Odds、Call me)、別れが見えると内向きにいじける(マスカラ、ってあなた)。セピアは ”第三者のように心を守った*12”ひきずるGum Tape期よりは傷が癒えてようやくふっきれたあたりの曲なのかしらと思いながら聴いています。

 

先月まで続いた北斗さんの表紙祭り。東海ウォーカー 2019年7月号から2022年6月のBOURGEOIS 9th.まで3年間の46誌を並べ書棚に飾ったら天井2段に床まで溢れた壮観の「松村北斗かく戦えり」の記録。稔さんがハードルを上げてしまった感のある柊麿君役も高評価で、作品については若干物議を醸したようですが、演じ手としての北斗さんの価値が毀損されるどころか逆に盤石さすら示唆されたことに感嘆しています。

今は大我君の表紙が書店を埋めていますね。「流星の音色」は松竹歌舞伎会さんにお席をご用意いただけました。どうか恙なく公演が行われますように。髙地君、スクール革命でのシガーボックスにテレビの前で思わず拍手喝采していました。「夏の夜の夢」はFCで当たり(!)、今から観劇に向けてわくわくしています。慎太郎君はナンバMG5、最後まで本当に面白かったです。明日からの「泳げ、ニシキゴイ」も楽しみです。オールドルーキー、猛練習されたマラソンだけでなく、口惜しさと反骨心と心細さ、弱さとの混じりあった表情が素晴らしかった樹君。DREAM BOYSも観劇できますように(祈)。黒髪・短髪が素敵なジェシー君は、TOKYO MERの撮影も佳境でしょうか。

辛口評価でツッコミ気質の私が、SixTONESの皆さんが何かで露出される度に新たなよさをみつけられて、自分がよい人になったような気がして(笑)嬉しいです。北斗さんも既に新たなお仕事に着手されていらっしゃるでしょうか。発表を心待ちにしています。

いつでも、どんな北斗さんも応援しています。                        

                                 かしこ

 

*1:そうおっしゃってますよね。いや、違っていたらごめんなさい。私が割に後付け辻褄合わせタイプなので勝手に共感

*2:もちろん売れなければ自己満足に終わるので商品としての視点はあるべきですが

*3:主役でない舞台でも与えられた仕事を全うしようという姿勢(でも自分達の色はしっかりみせる)には感銘うけました

*4:今のところ、ライブは曲も演出も全て、常に好みのど真ん中だと思います

*5: ある特定の人について選択的に反応するニューロンが脳の内側側頭葉にあって、「ジェニファー・アニストンニューロン」と呼ばれているそうです。どんな角度から撮られた写真でも、どんな役柄を演じていても、名前の文字列だけでも、視覚や聴覚だけでなく概念が脳裏をよぎる瞬間にも活動するそうです。Johnny's King and Prince IsLANDでSixTONSの映像にだけ違う反応をした私の脳にも明らかに形成されていますね...

*6:昭和生まれが想起する熱海のイメージとMVの翳りとは相容れず。撮影地を知らずにいたかった件(笑) 

*7:似たときめき感を感じるのが『一点の 曇りなき空、私飛ぶ 夏と共にさらってみせて(あべちゃんの天気予報2019年09月27日より)』これ大好きです

*8:ジェシー君がお招きあずかったMISIAさんのラジオでも、敢えてマイクのテクニックを使わずにブレス音を入れることの効果についてお話されていましたよね。面白かったです

*9:「 多分、あの時(デビュー目前)にならなきゃ歌えない曲だった」「過去のこととか自分たちと向かい合うってすごく恐ろしくて勇気のいることだから あの曲を心から歌うためには結成から数年は必要」2020年6月15日北斗學園 NAVIGATOR収録曲セルフライナーノーツより「光る、兆し」について

*10:注9に同じ

*11: 遠慮してジャニーズ随一と書きましたが、スマホのロック画面にしたFASHIONのサムネイル画を見ては世界一だと思っています(笑) 

*12:この一節には、はっとしました

052: 2022年5月24日_xxxHOLiC、恋なんて本気でやってどうするの?

拝啓 

 走り梅雨の降雨と暑さとに交互に見舞われる日本らしい天候のこの頃、相変わらずのお忙しさと拝察しますがお加減いかがでしょうか。

今回のお題は「xxxHOLiC」(以下「ホリック」)と「恋なんて本気でやってどうするの?」(以下「恋マジ」)です。両作品では今のところ私は「松村北斗の演技」ではなく「百目鬼さん」と「柊麿さん」を観ているようです。つまり、以前書いた「推しの演技を評する際の陥穽」=演技者松村北斗に余計な思いを致すこと、が前景にたつことなく気楽に楽しく拝見しています。それが鑑賞する私の心持ちの変化なのか、作品や役柄によるのか、観る者に余計な感情を抱かせないことも演技力というものなのか...

xxxHOLiC

日舞台挨拶と副音声上映と3回拝見しました。

唯一無二の個性の蜷川実花作品の数々は私にとっては直観的に強く惹かれる対象ではなく、かといって苦手でもなく。被写体と作り上げられた世界観とが符合していて素敵だと思うこともあれば、過剰さを少しうるさく思うこともありますが、そういう個性、作家性なのだとフラットに作風を”受けいれ”鑑賞するものでした。

先入観なく映画を観たかったので原作は未読ですが、原作ファンの方々の「原作を読んでいない人には話がわからないであろう」という懸念*1は少なくとも私に関してはあたらず、十分内容を把握できたと思っています。

北斗さんご出演の大事な作品なので背景を知りたいと思い、昨年11月に蜷川組(公式後援会)に入ってみました。蜷川監督や事務所の金谷社長の投稿やライブトークで、人の暗部を描く印象の強かった蜷川監督が思いがけず漂わせていた”善なるもの”や、純粋で無邪気とすら受けとれる作品作りへの思いを発していたことも興味深く、ホリック鑑賞前に彼女を見る目が少し変わりました。

十数巻に及ぶ原作を110分に収める芯としたのはその”善なる”部分で、大づかみに解釈すれば恐らく彼女の息子さん世代へのメッセージなのだと推測しています。しかしかなり直球の”人生訓”が主題でありながら一部からの深みがないという評価。それは例えば吉岡さんの“怪演*2や、百目鬼四月一日の関係性、アカグモの作りこんだビジュアルや、やや大仰な表現が、媚びやうけ狙いととられかねないからかもしれません。

しかし蜷川監督のお話からそんな人間関係や演者の美に対する監督ご自身の”萌え”的美意識を満たすことも創作活動上重用なことはうかがえますし、その蜷川女史の”趣味性”が作品世界を作り上げる重要要素なのでしょう。蜷川ワールドといえば花ですが、本作では溢れる花より水に強い印象をうけました。渋谷のシーン撮影開始時の偶然の降雨から着想したものだと伺いましたが、全編、雨、雨、水、水…の印象*3。幸せな4月1日や校庭*4の食事風景も晴天の下であったから、水と雨とが四月一日の心情とリンクしているのでしょうか。

私はこの作品をダークファンタジーの形を借りた四月一日の成長譚ととらえていたので、怯え駆けまわる姿、屋上に佇む姿から、まだ情報の乏しい冒で既に四月一日の内面が伝わってきてひきつけられたし、理解を助けられたと思います。神木君は恐らく出演作はほぼ観ていて信頼している俳優さんですが、陳腐になる危険性をはらむファンタジー漫画の実写化にリアリティを持たせた「神木君の説得力」に圧倒されながら拝見することになりました。物語世界の嘘を背負った、疾走シーンの背景にズザサササーって擬音が描きこまれているかのようなアニメ的コーナリング*5!眼にフィーチャーしている物語ではあれど、眼が印象的な顔ではない、むしろ地味とすらいえる眼が、厭世、戸惑い、疑念、諦念、終盤の自信、妖艶まで表現する雄弁さに魅入られました。

しかし、いかに神木名人とはいえファンタジー世界の虚構に現実味をもたせつつ四月一日の物語に集中せしめるのには他の登場人物は単純化される必要があったと思うのです。北斗さん、吉岡さん、磯村さん、配役時には旬も走りであったろうと思うお三方が上手に”単純化された”ことが物語を少しでもわかりやすくし、四月一日の成長譚を際出せることに貢献したと思うのです。

ということで、誠に人間くさく苦悩する四月一日という人間の”成長譚の一要素”としての百目鬼は、恐らく監督のオーダーに非常に忠実に、自我を表出させることなく「かっこいい」という冠を戴した”コスプレ”を遂行した結実のアイコン的存在と推測しています。四月一日を吹っ飛ばすターミネーターの如き登場シーンが衝撃でしたし、監督の注文とはいえ声低すぎるし姿勢良すぎるし、エンドロールの協力社にマンダムとありましたがきっと整髪料の多くは祐子さんと百目鬼が消費しているのではという髪型(笑)

敢えての記号的・二次元的な役柄だとは思うのですが、わずかに感情をのぞかせる、例えば四月一日のお弁当を口にした驚きの表情などが印象的でした。私の一番好きな百目鬼さんは、決戦を終え、ミセへ向かう”漢”な歩き方のシルエット*6ですが、アクションも見どころでしたよね。ワイヤーアクション(?お堂でふっ飛ばされるのはそうですよね?)も、雪駄で階段お堂を走るのも、袴で水の中を動くのも大変でしたでしょうし、弓道経験者からするとあのキレのよい離れをだせるようになるまで弓も相当練習されたのでしょうね*7。副音声の「数年かかる」は大げさですが、大学体育会弓道部の新入部員もGW合宿1週間の最後に的前に立たせると的まで届かなかったり山なりの矢飛びだったりがほとんどですし、弓返りできるまでの頬や前腕の痛さも知っているので自然な離れと真っ直ぐな矢飛びを習得されるまでの努力に拍手です。 
舞台挨拶は各世代の旬の美人俳優揃い踏みの華やかさ。ステージの立ち位置に立ってからの一礼や、まず中継先の人々を気遣う辺りが北斗さんらしいと好もしく拝見しておりました。蜷川監督の目には涙が浮かんでいたようでしたし、北斗さんのジャケットの胸ポケットの蝶の刺繍、磯村さんのネクタイや吉岡さんの2回目の衣装の蜘蛛の糸風の模様など皆さんの作品への思い入れが衣装にも現れているようでした。北斗さんが積極的に笑いを取りに行ったりそれを一人で回収していたりと伸び伸び振る舞えているように思えて*8、そこからも制作チームの雰囲気のよさが伝わってくるようでした。

そんな舞台挨拶の日に録られたというオーディオコメンタリーは当然楽しい。21日に副音声付上映に行きましたが「どうも、富士山です」から笑わされ、声を出さないよう苦労しました。「天気が番手読む」というザ松村北斗な言葉、”はだけて”10代を懐かしむ大人ジャニーズ発言、「百目鬼だけれどいっぱい食べて」という妙な指令、北斗さんがやはり「作り手目線」で映像や演技の技術的な部分に言及することが多かったこと、等々、いちいち頷きつつ(笑いこらえつつ)聴きいりました。

恋マジ

「この世は美しい物で溢れている」との純さんの言葉通り、窓から入る光の加減が人物や什器を美しく照らし、暖色の照明に映えて美味しそうな食物をさらに純さんがまことに美味しそうに召し上がる。純と柊麿の並び歩く姿は引きで撮ってもバランスがよくて美しい。2次会を終えSalutに入って行く動線に従う純目線映像の新鮮さ。そんな素敵な映像で、傍から見てあきれる位にどうしようもないヒトの姿が描かれている。飛び交うあけすけな台詞や純の言動の突飛さもあってご立腹な視聴者もおられるようですね。私も純には共感も思い入れもできないけれど、放送開始前の北斗さんによる人物評を遡って読めば「こうかな?と予想した逆をいく。柊磨からすれば自分の想像の中に収まらない不思議な相手だからこそ気になってしまう。“難アリ”な純」とあって、私が嫌な感じを抱かされてしまうのは広瀬さんの演技が迫真だからなのでした。

あからさまなモノローグでさらされる純の感情や思考と異なり内面は全く明らかでないながら、同じく私にはちょっといけ好かなかった柊麿の言動。「心ざわつかせちゃ、かわいそう」って...自分の容姿が美しいことを知っていて”活用”している人の鼻持ちならない自信。「泣いていいよ」ってよく知らない人に言われても涙もひいてしまう…(笑)「僕でよければお役に立ちますよ」と告げた表情の空虚さ、鼻をくしゃっとして笑うあざとさ。このあたりはひょっとして「職業アイドル」として人前に立つ際の北斗さんには部分的に内在する要素かもしれませんが、恐らく北斗さんご自身の中にない要素が多い(推測)。綿密な”嘘”を積み重ねて構築された「柊麿」がそこに生きていて、「松村北斗演じる」という冠がない状態で余計な思い入れのない「ただの登場人物長峰柊真」を楽しめています。

敢えて蜷川監督の”萌え”と嗜好を盛り込んだアイコン百目鬼と同じく”記号的イケメン”と思われた柊麿ですが、高石プロデューサーの仰る「○キュンとか○○男子とか、キーワードでもの作ってるわけではなく」の通り、たとえば柊麿のシャワーシーンにも「こういうの見せておけばファンは喜ぶだろう」的へつらいは感じさせられない(蜷川さんのはご自分の欲求の体現だと思うので私は観る者への媚びは感じないですが。このあたりのおもねりのない清潔感は北斗さんの個性かももしれないですね)

しかし、恐らく視聴者を悶絶させる意図はあったであろう第4話の濃いキスシーンに照れるでもなく美を見出すでもなく「柊麿ならそうだろうよ(でもひな子ちゃんにひどくない?)」と納得して淡々と視聴していた私は、美しく見えるようにすごく気を配っておられたであろう製作陣と演者に謝らねばならないでしょうか(笑) でも、そこまで「柊麿だった」北斗さんの「勝ち」です。はい。 

それまでいけ好かなかった柊麿の印象が変わったのは「これじゃ、足りないんだけど!」の台詞。純の姿を認めてにやっとしながら、恩着せがましさや哀れみでもなく、ただ純が戻れるような”口実”を提示するような温かさと茶目っ気が感じられて一気に血が通ったように思いました。そこからは陶器展で純を見つめる眼差しや、第2話で「(大津に)逃げられた」と告げられた時の表情、第3話で純に抱きつかれた後の抜群に繊細な表情、差し入れをほおばる純を見るどや顔と、徐々に人間味が加わってきて。その過程でほんの少し北斗さんが垣間見えてしまったように思った瞬間も実はあって。「栄養とんないと脳に糖分まわんないからいいアイデアうかばないんじゃない?」という台詞の小理屈や、ナプキンを畳みながらの「おーれ、車じゃないし、ふん」という節回しは、まさに松村節ではありませんでしたか?(笑) 折り返し地点に来たドラマの人間関係の顛末も、詳らかにされていく柊麿の背景も楽しみにしています*9

 

日舞台挨拶後の挨拶動画や7周年のYouTubeライブ配信で「感想が届くのを待っている」「手紙を郵便で送っても読んで下さっている」と伝えて下さった北斗さんの「おねだりに応えて」(あーすみません、そう書いてみたかったのです。僭越至極)ホリックと恋マジの感想を認めました。現時点での総括は「上手にきれいな嘘を楽しませてくれてありがとう」です。

 

嘘ならぬ現実のライブにも巻き込みに巻き込まれて半年。Feel da CITYツアーもとうとう仙台を残すのみとなりましたね。幾度でも書きますが、楽しい公演をありがとうございました。

ツアーが終われば「わたし」の発売。突然流れた挿入歌(またやりやがった…(笑))の美しさ、MVも謎めいていて、全容が明らかになる日を楽しみにしております。そんな忙しないSixTONES暦で生きている私にも月日の早いこととつくづく思いますが、メンバーの皆さんはさらにお忙しいことでしょう。

ドラマ撮影も佳境であろう慎太郎君の大丸君、本当に活き活きしていて素敵です!心楽しいドラマで水曜夜はすかっとした気分で眠れます

大我君には音楽製作担当兼主演の今年も高い壁を目指す夏の大冒険ですね。どんな夢を見させてくれるか楽しみです。

芝翫さん、蜷川舞台を継承されるスタッフの方々、松任谷さんの音楽、重厚な座組に加わる髙地君。夏の夜の夢はRegent's Parkの野外劇場で時々モップ休憩が入る雨の中、傘さしながらワインを飲むイギリス人達(変ですよね、私ものんでましたけれど)の中で観ましたが、そんな気楽な軽喜劇。髙地君が軽やかに飛躍をとげられることを祈っています。
テレビで拝見しない日がないのでは、と思う活躍のジェシー君。SINGもロングラン中ですね。本格的なのに小学生の甥っ子達も大好きです(本格的だから、か)。同じく出ずっぱりの樹君は、ひょっとしてDREAM BOYSも再演かしらと皆楽しみにしています。

皆さんが充実しているのが本当に嬉しいですが、どうかお身体にお気をつけて。お目にかかれる機会、心動かされる瞬間の数々を心待ちにしております。「ありえないところまで」連れていって下さい(笑)。いつでも、どんな北斗さんも応援しています。

                                  かしこ 

2022年5月24日

*1:そのようなレビューが未見の人に作品へのハードルを上げているようで残念です

*2:皆さん話題にされていましたが、私もエンドロールの「セクシー所作指導」に釘付け(笑)ポールダンサー指導に納得ですが、吉岡さんと磯村さんのふりきりっぷりに笑いそうになりつつも感心していました

*3:これ以上雨が降り続いてどんよりしているのはブレードランナーくらいではないかしら

*4:学校のシーンで照明の角度で人影が壁の上方から天井に映るのが学園の尋常ならざる雰囲気を醸し出していて興味深かったです

*5: 走り方まで数パターンあるとはさすが神木名人ですが、北斗さんもレッドアイズでは””女の子走り”でしたね

*6: こちらは普段のYouTube等で見る北斗さんの歩き方でもなくまさに百目鬼的歩み

*7:あの神事のように矢道の近くに人が立っていて弓を引くのは大学生時代6年間弓道漬けだった私でも怖いですが、あれは別撮りだったのでしょうか。私は小笠原ですが、日置流の斜面うちおこしは映像での見栄えがよいのですよね。ちょっと物見が甘くて弓手の肘が入っていないのはご愛敬(笑) 

*8:最近の地上波バラエティでもそうですから、そこをとりたてて指摘するのは失礼かもしれませんが

*9:結局、何か訳ありの役なのですね、北斗さん。幸せ一杯で無邪気な役も見てみたいわー