054: 2022年7月18日_わたし
拝啓
あっさりと退いた梅雨が戻った小暑の候、北斗さんには健やかにお過ごしでしょうか...「ワガママ彼女に振り回されるラブコメ気圧エンジョイ勢」でしたね。お大事に。
劇中突然流れた「わたし」も、広く受け入れられ嬉しいですね。誕生日ウィークと重なったプロモーションも楽しそうで何よりでした。皆さんの発言を「コンセプトや理由は比較的後付けよね、この人達」と含み笑いしながら楽しんでいますが*1、それは聴いていてSixTONESの楽曲からはまず「自分達がこれが好きだから演りたいのだよ」という無心の丹精が伝わってくるように思うからです。
他のグループと比べられるのがあまり気分よいものでなかったら申し訳ないのですが、例えばSexy Zoneの作品には情報収集・分析と学習に長けた秀才にありがちなマーケター的意図が透見され、King & Princeには主にファン目線(ファンサービス的意図)でのコンセプトありき、をアルバムからもライブからも濃く感じるように思います。もちろんそれはネガティブな意味ではありませんし、そういう視点はSixTONESの楽曲制作過程にもあることでしょうけれど、私は彼らの作品からより”商品”としての意識を感じ、SixTONESのそれからは、より嗜好品たる*2音楽、好きな音への傾注、鳶飛魚躍を感じる。多様な楽曲の中には「自分としては第一選択ではない」ものも混じるのでしょうけれど、多数決の結果を受け容れ演じることをまっとうしようとする職人的な*3姿勢も聴こえてくるように思える。
私も音に対する感性がSixTONES制作陣と近いとは思いつつも、中には最初から好みのど真ん中というわけでない曲もあるのです。しかし聴きこむことやパフォーマンスを見て好きになったり、最終的には演じている人こみ、作品と作り手の総合力にひれ伏していることがほとんど*4 。「好きな人の好きな物なら好き」などというかわいらしい心根の持ち主ではないのにね(笑)
わたし
予告なく「ありえなーい」と一節流れた瞬間に柊麿、もとい松村北斗の声とわかった全国津々浦々の方々にも私にも脳に”SixTONESニューロン*5”あるいは”松村北斗細胞”が形成されているのでしょうね。
恋をするたび自分を見失う(笑)SixTONESさん。「僕が僕じゃないみたいだ」では己の感情の変化が「君のせい」と二人称も含めた内容で「笑える」し、それに対する戸惑いも「君といる時の自分が好き、こんな僕も悪くない」と前向き。
一方「わりと上手くやれている」「わたし」の確立された自我と生活を「何気ない言葉」に「奪われ」、唯一現れる「あなた」は「見せたくない」拒否の対象。「『わたし』がおいつかない」と感じる程に混乱させる存在への違和感と「無駄な事で疲れる位なら」という後ろ向きさが根底にある。内容こそ恋愛の手前でうだうだしているこの曲。只中で放り出された「ってあなた」と状況は異なりますが空気が似ているように思い(共に佐伯youthKさん作だったのですね)聴き比べてみました。曲調や北斗さんの声の使い方は確かに似ているようですが、発表当時は非常に洗練された歌唱だと思っていた「ってあなた」から、さらに声が深くなり、表現力や歌唱の成熟度が増しているように感じられて驚きました。「その意味は?その価値は?」の諧調の美しさが中でもすごく好きです。
ところで「汚れた靴」という言葉。何かの比喩としてSixTONESさんがお好きなのでしょうか。「ST」でも印象的な言葉だったのですが、作者も違うし慣用表現を調べても見あたらず。「ST」では「逃げたり言い出せなかったりで失った過去」の比喩、「わたし」では磨いても”またすぐにどうせ”泥だらけになる(だから無駄な事せずさっさとしまおう)という思考の流れ。気になる言葉なのですよね。
わたしMV
翳りのある繊細なロマンティシズム。ソロムービーは6者6様で、”迷い、戸惑い、憂い”を手や視線の動きで表現する舞踊的な高地君や大我君に対し、動きの少ない演劇的な北斗さん、慎太郎君、樹君。特に北斗さんは”位置の高低”以外ほとんど動かず佇まいや視線で演じている。そして、他の人が「只中の」感情の揺れ動きに見えるのに対し、なぜか既に”後悔”が見えたり、自分を責めるかのように、いじけたように礫を投げだしたりする北斗さんのソロ。渦中で迷う時に、そこに足を踏み入れてしまった事自体を既に悔やむのかしら。
花束という本来甘い物が、その色合いと世界観から渋く控えめなのが、誠にSixTONES *6
オンガク
音が始まる前のジェシー君の息を吸い込む音が、高く飛ぶ前の準備動作みたいで、本当に何か高くそびえる障壁を跳び越えそうな、そのまま空に飛んでいってしまいそうな高鳴りを感じさせて素敵、素敵*7。「ってあなた」「僕が僕じゃないみたいだ」で聴かれる北斗さんの吸気が短くひっそり不安混じりの集中に聴こえるのに、ジェシー君のそれ*8は深く長めで拡散するように響いて(曲の性格もありましょうが)対照が面白い。最初は単純で明快な曲調だと思っていましたが、聴き重ねてくるとそれが故の安心感。
経験を重ねて醸成された機微を繊細に前向きに綴る歌詞。心燃やし高く帆を張り、と拳を固めた日々から、今や尖らずとも笑みを浮かべて進める確かな足場を得て。愛や恋も飛び越え信頼する”君”とはメンバー、スタッフ、ファンなのか、あるいはオンガクか。たくさん傷ついてきた人達が、今*9、この歌詞を高らかに歌うことの意味に感じいります。「光る、兆し」「NEW WORLD」に連なる曲だと思いますが、その一連の所謂”エモい曲”の中では、一番好き。
「光る、兆し」について「ついつい「迷う」という言葉に心が反応してしまいながら歌っている」と綴った*10北斗さんの、”あの文学賞もんだな”、”一歩ずつ喜怒哀楽とそれ以上を”の希望に満ちた澄んだ高らかな声に迷いはみじんも感じられない。その、過去の傷も今の軋も”無駄なもんはひとつもないさ”と肯定できる「今」への喜び溢れる旋律にこちらも胸が高鳴ります。続く~奏でていこう~重ねていこう~で個性が6つ重なるその美しきこと。数年前には激しく刻むものだった”時”から”時代や老いも君と”の境地に至るの、齢30に満たずして早くない?とツッコミつつ、そうだね、遠く高く飛んでいこうね、と単純に同意してしまうのです。
共鳴 Brave Marching Band Remix
元々好きなブラスの爆音響くRemixにイントロから大喝采。マスカラのAfrobeats arrange同様、原曲より好きかもしれない。マスカラはAfrobeatsに原曲の生々しさが薄められ運転等しながらでも流せる聴きやすさになり、「共鳴」では原曲の生硬さがMarchingの響きとリズムの力強さを得て。でも歌い手6人ともに声が強いから、爆音金管にもマーチングならではの鼓隊のリズムの勢いと迫力にも負けていないのが素晴らしい。初めて聴いた時から「甲子園のスタンドにスーザフォン何本も並べて攻撃回に爆音を響かせて欲しい」と思っていましたが、フラッグ翻したカラーガードが颯爽と行進するマーチングパレードも観てみたい!
ということで、既に次のシングルで「わたし」がアレンジされるなら、”ノスタルジックボサノヴァ”か”エキセントリックタンゴ”か、でも素人の想像の遥か上を行って欲しくもあり...
シアター
「オンガク」を先に聴いて「尖らなくてよくなったSixTONESさん、ふんふーん」と思いながら聴き進めたところで、イントロから不穏で偽悪的な「シアター」。歌いまわしも、誰が誰風になっているかなどと想像しながら聴くのも楽しい。
脳内に映画グランド・ブダペスト・ホテルのキッチュな色彩と雪の中列車が橋を渡るシーンとが再生されるのは何故なのかしら。多分「FASHION」のMVのポップ+アバンギャルド+キッチュが大好きで、そこがぴったりこの上なくスマートに決まることではSixTONESはジャニーズ随一だと思っているから*11だと思うのです。MVが観たい曲。
LIVE音源3曲
Feel da CITYツアーセットリストから敢えて選べば最愛の3曲。
「Good Times」は客席のClapと歌い手のアドリブが広い空間に響いて宴の多幸感と終わりの寂しさとが想起されてしまうし、「Everlasting」ではアリーナに拡がる夜光虫の海の美しさが蘇る。「WHIP THAT」はスタイリッシュ宴会部長にのせられた狂乱を覚えている身体を動かす(笑) 空間に拡がる音が堪えられない魅力のライブ音源を収録して下さってありがとうございます。が、またライブの空間に浸りたくなってしまう..どうしてくれんだ(笑)
セピア
爽やかな音色に切なくも前向きな?セピア色の写真がモチーフの歌詞に「Link Buds Sーオンガク」の次は「Xperia-セピア」でCMを、と想像。春先の携帯キャリアやスマホのCMってこんな感じの回顧と明るさ爽やかさの綯交ぜではありませんか?
違う曲をSixTONESという人格にかぶせて聴くのも楽しみ。恋愛中のご執心(Hysteria、Mad Love、So Addicted)、叶わぬ愛にも果敢で貪欲(Papercut、Lost City、Odds、Call me)、別れが見えると内向きにいじける(マスカラ、ってあなた)。セピアは ”第三者のように心を守った*12”ひきずるGum Tape期よりは傷が癒えてようやくふっきれたあたりの曲なのかしらと思いながら聴いています。
先月まで続いた北斗さんの表紙祭り。東海ウォーカー 2019年7月号から2022年6月のBOURGEOIS 9th.まで3年間の46誌を並べ書棚に飾ったら天井2段に床まで溢れた壮観の「松村北斗かく戦えり」の記録。稔さんがハードルを上げてしまった感のある柊麿君役も高評価で、作品については若干物議を醸したようですが、演じ手としての北斗さんの価値が毀損されるどころか逆に盤石さすら示唆されたことに感嘆しています。
今は大我君の表紙が書店を埋めていますね。「流星の音色」は松竹歌舞伎会さんにお席をご用意いただけました。どうか恙なく公演が行われますように。髙地君、スクール革命でのシガーボックスにテレビの前で思わず拍手喝采していました。「夏の夜の夢」はFCで当たり(!)、今から観劇に向けてわくわくしています。慎太郎君はナンバMG5、最後まで本当に面白かったです。明日からの「泳げ、ニシキゴイ」も楽しみです。オールドルーキー、猛練習されたマラソンだけでなく、口惜しさと反骨心と心細さ、弱さとの混じりあった表情が素晴らしかった樹君。DREAM BOYSも観劇できますように(祈)。黒髪・短髪が素敵なジェシー君は、TOKYO MERの撮影も佳境でしょうか。
辛口評価でツッコミ気質の私が、SixTONESの皆さんが何かで露出される度に新たなよさをみつけられて、自分がよい人になったような気がして(笑)嬉しいです。北斗さんも既に新たなお仕事に着手されていらっしゃるでしょうか。発表を心待ちにしています。
いつでも、どんな北斗さんも応援しています。
かしこ
*1:そうおっしゃってますよね。いや、違っていたらごめんなさい。私が割に後付け辻褄合わせタイプなので勝手に共感
*2:もちろん売れなければ自己満足に終わるので商品としての視点はあるべきですが
*3:主役でない舞台でも与えられた仕事を全うしようという姿勢(でも自分達の色はしっかりみせる)には感銘うけました
*4:今のところ、ライブは曲も演出も全て、常に好みのど真ん中だと思います
*5: ある特定の人について選択的に反応するニューロンが脳の内側側頭葉にあって、「ジェニファー・アニストン・ニューロン」と呼ばれているそうです。どんな角度から撮られた写真でも、どんな役柄を演じていても、名前の文字列だけでも、視覚や聴覚だけでなく概念が脳裏をよぎる瞬間にも活動するそうです。Johnny's King and Prince IsLANDでSixTONSの映像にだけ違う反応をした私の脳にも明らかに形成されていますね...
*6:昭和生まれが想起する熱海のイメージとMVの翳りとは相容れず。撮影地を知らずにいたかった件(笑)
*7:似たときめき感を感じるのが『一点の 曇りなき空、私飛ぶ 夏と共にさらってみせて(あべちゃんの天気予報2019年09月27日より)』これ大好きです
*8:ジェシー君がお招きあずかったMISIAさんのラジオでも、敢えてマイクのテクニックを使わずにブレス音を入れることの効果についてお話されていましたよね。面白かったです
*9:「 多分、あの時(デビュー目前)にならなきゃ歌えない曲だった」「過去のこととか自分たちと向かい合うってすごく恐ろしくて勇気のいることだから あの曲を心から歌うためには結成から数年は必要」2020年6月15日北斗學園 NAVIGATOR収録曲セルフライナーノーツより「光る、兆し」について
*10:注9に同じ
*11: 遠慮してジャニーズ随一と書きましたが、スマホのロック画面にしたFASHIONのサムネイル画を見ては世界一だと思っています(笑)
*12:この一節には、はっとしました