書簡・編

おたくもすなる日記といふものを、我もしてみむとて、するなり。

031: 2020年3月24日_TrackONE -IMPACT-

拝啓

 辛夷がほころび桜は花開き、人の世は混乱していても春は着実に来ていますね。お元気でいらっしゃいますか?公演延期やイベント中止、不確定な事象の様々に、北斗さん、メンバーの皆様、スタッフの方々も落ち着かない日々を過ごされていると拝察します。楽しみにしていた静岡公演、北海道公演ですが、世界中が困難に直面している時に自分達だけ心から楽しくできるとも思えず、かといって催行されれば行くのを思い留まる程の自制心はないので、苦渋のそれではありましょうが、御社が延期・中止を早めに決断できる体力ある会社であったのはありがたいことでした。せめてこの機会に少しはゆっくりしていただけますよう願っております。
それでもTVの特番も、ラジオや事務所の公式動画やブログでのコミュニケーションもあり、さらにこのような状況下では即時性が威力絶大のSNSで機を逃さぬ手厚いおもてなしをいただけるのは、本当にありがたいことです。多様な手段を使いこなせるのもSixTONESがあの過渡期にJr.でいてくれたからこそだと思うと人間万事塞翁が馬。長野の振替公演が大我君誕生日を祝う楽しい時間となったように、今回の延期・中止が、災い転じた福になりますように*1

 

TrackONE -IMPACT-ツアー。デビューライブなのに、2018年の3曲は使っていないのに、6割がオリジナル曲とは、改めて贅沢で充実したJr.時代だったのですね。しかも徹頭徹尾、6人で、という決意表明。
初日の第一印象は「想像力と身体性を駆使して、地面に描いた線の上に精緻な秘密基地を築き上げていた子供達が突然VRを与えられたみたい」でした。創意工夫と身体表現の賜物の手工芸品が、潤沢な予算と設備を得て工業製品になった、デビューという第一次産業革命。今YouTubeで観ても、金色の光溢れる中、重厚で荘重なセットを背景にしたパフォーマンスは本当に格好よいのですが、掌上で独り占めして飽かず眺めていたくなるような繊細な手工芸品的パフォーマンスはもう見られないのかなあと、初日からちょっと”センチメンタル入っちまった”のです。こんな心のチクチクはそれだけ思い入れ慈しむ対象があればこそ味わえるものでしょうし、実はその後回を重ねて参加するうちに印象も変わっていったのですが、初日に抱いた違和感の正体を見極めて言語化しようと模索するうちに桜が咲き始めてしまいました(笑)


今回のオープニングは水晶型の機構に入って正面上空から現れる正攻法。鎖に繋がれて登場したり、まっさらの新曲で始まったり、センターステージ上空から想定外の曲をお供に降臨してきたり、これまで散々驚かされ続けてきたので、”Never repeat the same thing”の宣言どおり、今回は逆をついてひねらず”王道のそれ”になったのか、あるいはお披露目ライブだからか。でも、しっかり正面から顔を見せたのは一瞬で、嬉々として”We're rollin' rollin'”し続けるのはやはり王道ど真ん中ではないのでしょうね(笑)。

ともあれ、デビューライブの高揚感+お正月にて、目出度く申し納め候感*2その後、RIDE ON TIMEの舞台裏映像で、それが実は”機構に動かされている”のではなくご自分達で操っていて、筋力的にも三半規管にも負荷の高い力仕事だと知りました。”人の力”の介在する部分は残っているのだと、ちょっと嬉しくなりました。もちろん、様々な舞台装置のそれ自体の面白さはあって、例えばセットの磔台”が畳まれているとダイヤのような形に見えて、水晶”と宝石でそろえているならSixTONESらしい凝り方ですね。北斗さんご自慢の天井のモニターも、火球が飛んでいくようだったり、揺れる水面のようだったり、文字が流れて新幹線車内の電光掲示板のようだったり。ツアーロゴの>>>>>>も「真っ直ぐに突き進む/帰ってこない」「的を射る」という意味の縁起柄の矢絣のように見えて、おめでたい感じでした。

Mr. ZUDONからPARTY'S ONの間、モニターに映し出されたのは「きれいな悪夢」のようなサイケデリックな、でもスタイリッシュな映像。あれ、私、大好きだったのですが、『意図を知りたーい』(と、36ポイントくらいのフォントで大書したい)。オープニングから王道を進み過ぎて、つい、逸脱したくなったのか?Johnnys' ISLANDセルフィー2020の、ジェシー君の後ろで横たわってこちらを見ている北斗さんの1連2枚の写真*3

PARTY'S ONでは勇壮に上下する”磔台”が下降を始め、皆さんが腕組みしながら後ろ向きに倒れていく様を「どこまで腰が引けずに倒れていけるか男気選手権」的興味で見てしまうのですが、北斗さん、最後まで姿勢を保っていてさすがの体幹ですね。この曲では後屈位でほぼ逆転して歌っているのに表情が崩れないってすごいわと思ったり、後屈のし過ぎで腰を傷めるのではないかしら、私が後屈が美しいって何回も褒めたせいではないわよね…などといらない心配したり(笑)。褒めすぎ、期待しすぎ、という点では「美しい走り姿をみたい」なんて私くらいのニッチな要望だと思っていたのですが、今年は「駆けっこの速い男子」を目指すと書かれていた(TVfanクロス33号)ように、このツアーでは北斗さん、かなり走り回ってくださっていますよね。ありがとうございます。でもお疲れになりませんか? どのみち目を離すことなくずっと北斗さんを見ているので、どこかで美しい短距離ダッシュをほんの1、2回見せていただければ眼福、満足でございます。

走る姿のみならず、美しい動き愛好家の私を陶然とさせたのはSun Burns Downでの登場シーン。酔拳の老達人の如くゆらゆらと現れた北斗さんが繰り出した、静かで柔らかいのに鋭い跳び蹴りの、尋常じゃない高さと滞空時間。「静か、柔らかい、鋭い」の相矛盾する要素が共存する緩急が北斗さんならではなのです*4

Sun Burns Downでは黒いスタッズマスクも絶妙にあのパフォーマンスに似合っていて唸らされました。ジャニーズ事務所所属20代新人アイドルがレクター博士(羊たちの沈黙)…この末恐ろしさよ(笑)と思ってしまったのですが、「いくらSixTONESとはいえ」ステージで猟奇殺人犯はないですよね。後で(スタッズマスク)+(荘重に廻る巨大なタービン、剥き出しのダクト、重厚な鉄骨梁、磔台の動きの機械感)+(英国貴族風なTelephone新衣装)=スチームパンクと世界観を説明するキーワードに思い至り、ならば第一次産業革命という私の第一印象も、終演後開口一番友人が興奮して口走った、「ジェシー様ノーブル!!、歩くバッキンガム宮殿!!」も、正解だったのですよね。Telephoneの衣装、シルクハットでこそないですしタイもありませんが、ジェシー君と高地君と樹君はシャツとベストの上にフロックコートを羽織り、脚が長くほっそり見えるボトムスのヴィクトリア朝様式、北斗さんと慎太郎君のはもう少し機能的になったエドワード朝様式なのでしょうか。全員もれなく全身くまなく、美点を完璧に強調する大好きな衣装です。

Telephoneの綾羅錦繍とは対照的に、Imitation Rainではシンプルな黒衣装が選ばれたのは、世間のジャニーズに対するStereotypeを破る、大人の鑑賞に堪える歌の上手な長身のグループを印象付けるデビュー戦略なのでしょうか。シンプルな衣装も映えますし、CDジャケット用の赤(RAM-PAM‐PAMのアジア的な黄色い赤とは違って、欧風の青味の赤)も素敵です*5

Imitation Rainでは低音に居場所をみつけた、と語っていらした北斗さんですが、NEW WORLDではここまで出るのだ、と驚くような高音を出していたり、Imitation Rainを控えたBE CRAZYで存分にシャウトしたり”所信表明演説”で叫んでいたり、喉が丈夫なのですね。FC入会お礼の動画でも本来笑いを誘うはずのミュージカル風台詞で声がよく出るのに驚いてしまって笑えませんでした(笑)。+act誌(2020年3月号)では「声の幅がある」「ドスの利いた声も使う」と評されて、『今気づきました』、みたいにとぼけていらしたですが、ご自分の声が十分な武器になるって、とうの昔にご存じでしたよね?(笑)。

 

Stage fan誌(2020年 vol.7)に北斗さんが「見た人の気持ちの動きを想像して表現する」と語っていらしたのをよいことに、こうやってライブに参加しては心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくっています。答え合わせとはいかずとも制作の意図や背景を知りたくて*6、足を運んだ公演では大抵パンフレットを買うのですが、これまでどれだけ意欲と思惑が空回りしたトンデモパンフを見てきたことか(笑)。表面が毛でモフモフしていたり(剥げて因幡の白兎化してしまうんです)、満員電車で喋りだしたり(表紙を押すと声が聞けるのですが、TPOを察せず圧力で作動するんです)、人を撲殺できそうな重量感のハードカバーだったり、大きすぎて公演中置き場に困ったり。

今回は記念すべきデビューライブのパンフレットですし、グッズの質は安定のSixTONESさんとはいえ、期待しすぎてはいけないと閾値を下げて売り場に臨みました。が、今ツアーのパンフレット、満点です!!!!!! 重からず大きからず複数冊買っても持ち帰りやすい絶妙なB5サイズで書棚に収めやすい上に背表紙のタイトルで書棚から見つけやすいのです。

体裁だけでなく内容も素晴らしい。まずは3ページ目のテキスト。Apple社が起死回生を遂げた伝説の”Think different.”キャンペーンの”To the crazy ones”を髣髴とさせる宣言文。気概が感じられるのにお洒落で暑苦しくないのがSixTONESのよさですね。そして前半グラビアの劇画調加工がハードでとてつもなく格好よいのに、SixTONES JOURNALのベーグル作りの爽やかでかわいいこと。そしてTrack of SixTONESは製作者のグループへの愛着がしみじみ伝わるきめ細かさ。グッズの記録は貴重です。巻末のグラビアはまた違う趣向のクールさで、コンパクトな1冊でSixTONESの多面的な魅力を過不足なく伝えていると思います。さすが、rookieなのにtrailblazerの自覚をもって作られた作品。困ったなあ。最初から満点だされたら、今後閾値が上がりますよ(笑)

 

横浜アリーナ公演では”今のSixTONES”を見ておいて欲しい人達がFCにも入会してくれて当ててくれたので、一緒に参加できたのも嬉しいことでした。1人はこの20年嵐の現場で苦楽をともにしてきた尊敬する友人。嵐の現場では海外であろうと交通遅延があろうと淡々と”任務を遂行”してきた私が、SixTONESの初日には席で荷物をカバンからぶちまけてしまったり、ペンライトを振りながら段差を踏み外したり(バクステ前のアリーナで急に視界から消えていった人がいませんでしたか(笑))、駅の階段で転んだり、恋する少女の初デートか、くらいの極度の緊張感で、おたおたと鈍くさく狼狽しまくるのを冷静にサポートしながらも、内心驚いていたに違いありません。

でも、横浜の1月4,5日は私だけでなくメンバーの皆さんにもいつもと違う緊張感がありませんでしたか?ジャニーズのライブが初めてという方も結構いらしたためか、これまでのSixTONESの公演とは異なる雰囲気が客席にも漂っていたように思います。

2人目、私の”ジャの道”の師匠はSMAPデビュー以来のファンで、ほぼ全グループのFCに入っているのですが、生でSixTONESを観るのは永瀬廉君とのEXシアター公演以来。「北斗がよく踊っていて、メンバー同士を繋ごうとして頑張っていたねー。見直したわ」と評していました。(上から目線ですみません。原文そのまま記載しています)こんなに濃いファンダムを持つグループなのに「客席もメンバー同士も絆感が熟すのはこれからなのかな」と付け加えていたので、あの日の公演はやはり何か違ったのかもしれません。7日夜公演の、スタンドから気づいて鳥肌がたちそうな(よい意味で誤用しますが本当にぞくっとした)感覚を覚えた、ペンライトがくっきりと色分けされたBeautiful Lifeでの客席や、平素アンチセンチメタリストな私にも胸に迫るものがあってちょっと泣けてしまった「最後のジャニーズJr.コール」を、彼女にも見せてあげたかった...

3人目は、後ろの小柄なお嬢さんを気遣って終始中腰でいた夫。北斗さんを追ってひまわりの如く向きを変えては自分の目の前に遠慮なくお尻を向け、ペンライトを振り回し飛び跳ねる妻に何を思っていたのでしょう。せっせと手紙を書いては送り、積みあがる程にCDや雑誌、写真を買い込み、ことあるごとにうちわを作り、と妻がこれまでの”若いツバメ君達”とは桁違いに溺愛する対象を観察していたようです。自分は前の席のお嬢さん方へジェシー君が指で💓作ってあげていた流れ弾に被弾したためご満悦で、その後のテレビ露出も手伝ってジェシー君ファンになったようです。「ジェシー君はピンポイントでファンを見ていて、北斗君は全体をなんとなくまんべんなく見ている感じだよね」と私を慰めるように言っていましたが、「なんとなくまんべんなく」じゃなくて、北斗さんはきちんと私のことも見てくれているはず…はっきりとでなくても...と主張しておきます(笑)。夫は一度だけ連れて行った嵐のライブに仕事から遅刻してきてスーツだったためか、横浜アリーナのアリーナ中段でも目立ったようで大野君に指さしガッツポーズをしてもらったのですが、今のSixTONESの客席は当時の嵐と比べても男性が多くて、おじさんにも居心地はよかったようです*7

 

見えない脅威が跋扈し様々な制約が生じても、働いて、運動して、料理して、食べて、眠って、淡々と生活は続き、その折々に北斗さんとSixTONESを身近に思い起こして楽しくなれるのですよね。納豆が消えたスーパーの棚を前に、これはSixTONESの皆さんお困りだろうなと思ったり、レジ待ち列で興味惹かれて手にとった生七味唐辛子(桃屋製たったの268円の贅沢)が山椒の香りも高い絶品で、これは北斗さんご存知かしらと思ったり、スタジオプログラムが当面中止になったジムで普段使わないエアロバイクを使ったら付属モニターのYouTubeがログインしていないのにSixTONESを「あなたにおすすめ」してきてほくそ笑んだり。感染防止策で機器間が広くガラ空きなので気づかれていないと思いますが、黙々とトレーニングする人々の中、一人で笑ってしてしまったり、時に歌い出しそうになるのはちょっと勘弁してほしいところですが(笑)、お陰様でストチューブをお供に小一時間くらいあっという間に漕いでしまえるので、改めてストチューブ、使えるわーと、その有用性を実感しています。有用という点ではグッズのブランケットも重宝しています。一人で暖房入れるのは勿体ない時に首周り~腰まで温めてくれる絶妙なサイズで、今もぬくぬく包まれながら書いています。

 

ドラマのことや、あれやこれや、書きたいことは尽きないのですが、また近々のお手紙を当てにならない約束にして、そろそろ筆をおきます。まずはオールナイトニッポンを楽しみに、そして4月の静岡でお目にかかれますように。メンバー各位、スタッフの皆様、ご自愛くださいませ。

スポーツ報知の大きな記事で書かれていた「ずっと誰かに応援していてもらいたい。誰かに元気とか勇気とか感動を与えたい」の「誰か」は、間違いなく私だと思いつつ。

                                  かしこ

2020年3月24日

 

*1:事務所の方、本当に多くの公演中止でご苦労かと思いますが、なんとか振替公演をご検討いただけますように。でも、あのSHOCKがインスタライブになるとは。「ジャニーズをデジタルに放って」おいてくださっていてよかったです。22万人が楽しめたのですものね

*2:たくさん回って、というと染之助・染太郎さんの”新年めでたい感”が反射的に脳裏に(笑)

*3:北斗さんの、件の写真を見ると、ミレイのオフィーリアが思い出されます。北斗さん、パフォーマンス上は「”理路整然とした狂気”を計画的に利用する」のに、常識人なのに、オフショットやインスタグラムで脈絡なく発動する逸脱行為はどこから湧いてくるのでしょう。大好き(笑)))もそうなのですが、突如現れる「怖くてキモくてかわいい」と同じにおいがします。普通ああいうサイケデリックを意図すると極彩色になりがちなところ、背景も衣装も白で、表情と動きで表現するのがセンスだなあ、と((SixTONESって、おしゃべりは過剰ですが、こういう引き算の美学みたいなところがありますよね。対照的に、背負ったサイケ映像の過剰さに客席は笑っているのに超絶技巧のダンスをさらっとこなしているBAD BOYを観るたびに、大野智の天才にひれ伏すのですよね。サイケ映像雑感

*4:芸能界に「空手経験者」は数多いても、ジャニーさんもおっしゃっていたようにショウとして成り立つ美しさの人はそれほどいないと思うのです。 一刻も早くアクション映画のオファーを!誰か、誰か映画関係者はいませんか!と、あの蹴りを思い出すたびにもどかしく(SixTONESの空手経験者の皆さんもすごく美しい動きだと思っていますが、依怙贔屓です)

*5:ImitationRainについて語るのは難しすぎて、書いては思案し手が止まりを繰り返しているうちに時候の挨拶を書いた日にはほころんでいた辛夷の花も終わってしまいそうなので、これはまたの機会に

*6:DAVID BOWIE is”がVictria & Albert博物館で開催されていた時にロンドンを再訪していて、曲作りやアルバム作成の着想、衣装やセットの構想、変遷などが本当に面白くて半日以上かけて見入ってしまったのですが、いつかSixTONESのそのような企画があったらよいなあ、と思っています

*7:皆さんにかわいがってもらえる小さいお子さんも増えてきているようで、アイドル産業の持続性のためにも喜ばしいことなのですが、SixTONESのライブは音圧高めなので聴覚保護のためのイヤーマフをしてきてくだされば安心なのですが。私のジャの道の師匠も罹患したのですが、好きな音楽で騒音性難聴になるのは悲しいことで、御社で貸出しやグッズとしてご検討いただけませんか?